助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!
クロスリンク特許事務所のヤマダです。
今回も前回に引き続き、くまモンに学ぶ知財戦略についてご紹介していきましょう。
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「利用料をタダにする理由(その2) ~利用目的を制限する~」
熊本県は、くまモンのキャラクター利用料を取っていませんが、その利用目的については厳正な審査をしています。
例えば、食品であれば熊本県産の原材料を使っているなど、熊本県のPRに直接関係するものだけに利用を認めているのです。熊本県とは何ら関係がなく、単に「くまモン人気」に便乗するような利用は認められないということですね。
厳正な審査を通過した企業だけに、くまモンの利用を認めることで、「くまモン=熊本県」の関係性を強烈に印象付け、熊本ブランドの構築に役立てているわけです。
「くまモンに学ぶべきこと ~オープン戦略の使い方~」
熊本県は企業などに、くまモンのキャラクター利用を認め、著作権や商標権などの知的財産権の一部を開放する戦略を採っています。このような戦略を「オープン戦略」といいます。くまモンの場合は著作権と商標権が対象ですが、特許権についてオープン戦略を採用することもあります。
例えば、トヨタが燃料電池車の利用を促進するために、燃料電池車に関する特許を開放した例があります。知的財産権は独占権なので、ともすると、自分の会社だけで独占的に使い、他社には使用させないという戦略(クローズ戦略)を採用しがちです。
仮に他社に使用させるとしても、使用料をもらいたいと考えてしまいます。ただ、その度が過ぎると将来的な市場を狭めてしまい、自分の首を締めることにもなりかねません。熊本県は目先の利益(利用料)に惑わされず、オープン戦略をうまく使って、キャラクターの利用を促進し、市場を拡大することに成功しています。
しかも、キャラクターの利用目的を熊本関連のものに限定することで、くまモン人気を単なるキャラクター人気に留まらせず、「熊本ブランドのPR」にきちんと結びつけたわけです。オープン戦略を使えるか否かはケースバイケースです。しかし、知的財産権がクローズ戦略だけではなく、オープン戦略のためのツールとしても使える、ということを頭の片隅にでも置いておいてください。
そうすれば、きっと知財戦略の幅が広がるはずです。
今回のポイント
1.知的財産権の一部を開放することで市場を拡大することができる。
2.知的財産権の開放に条件を付けることで、本来の目的を達成することができる。
3.クローズ戦略だけでなく、オープン戦略も頭の片隅に置いておくべし。
おまけ
くまモンに関しては、たくさんの記事がありますね。私は下の記事が一番参考になりました。
興味がある方は読んでみてください!
・日経ビジネスDIGITAL/「くまモン」は私たちが育てました
ゆるキャラを“売るキャラ”に変えた熊本県職員たち(山根 小雪)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/2012102…