【要チェック】大きく変わる!「ものづくり補助金」


2020年から補助金の実施内容や申請方法が変わります。

助成金コラムでは、要チェックの変更ポイントをいち早く解説。
今回は、変更点が特に多い「ものづくり補助金」を取り上げます。

「ものづくり補助金」の申請を検討されている方はしっかり確認しておいてください。

1月20日、中小企業庁と中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)のホームページで、2020年に実施される令和元年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」(ものづくり補助金)の事務局の公募要領が公開されました。この公募要領から、今年の「ものづくり補助金」の事業の内容が見えてきます。

(事務局の公募要領は、補助金事業の運営を担う民間団体を募集する際に公開されるものです。
選定された団体が事務局となって補助金事業に関するさまざまな業務を行います。)

「ものづくり補助金」新制度の重要ポイント

今年実施される「ものづくり補助金」では制度の内容がいろいろと変更になります。
中でも次の4つが従来と異なる重要なポイントとなります。

 常時申請を受け付け、3カ月程度に1回ずつ採択発表
 加点要件が変更(減点要件も規程)
 補助率3分の2は小規模事業者のみ
 申請要件をクリアできなければ補助金を返還

申請を常時受け付け。事業スケジュールに応じた柔軟な申請が可能に

これまでの「ものづくり補助金」では、ほぼ年に2回、それぞれ応募期間と事業実施期間を限定して公募が行われていました。
しかし、企業の設備投資や事業拡張の計画と、この「ものづくり補助金」の応募期間と事業実施期間がタイミング的に合わない場合もあり、柔軟な運用を求める声がありました。
特に、各年度の後半に行われることが多かった2次公募では事業実施期間が短く、投資内容によっては、かなり慌ただしく事業を完了させなければならない状況もありました。

そこで、申請と採択のやり方が一新。申請は常時受け付けることになり、採択は3カ月程度に1回のペースで発表となります。
これよって、自社の事業スケジュールに応じた柔軟な申請ができるようになり、「ものづくり補助金」がより利用しやすくなると言えるでしょう。
また、不採択になった場合でも、次の公募まで待たなくても、計画内容を見直してすぐに再チャレンジできるかもしれません。

加点要件が変更。確実に加点を取れるよう準備を

申請する際に必ず押さえておきたいのが審査における加点要件です。
新しく始まる「ものづくり補助金」では、加点要件が次のようになります。

加点項目 条件
成長性加点 有効な期間の経営革新計画の承認(申請中を含む)を取得し
た企業
政策加点 政策加点 小規模事業者、又は、創業・第二創業後間もない企業(5年以内)
災害加点 〇昨年の激甚災害(台風15、19、20、21号)指定地域の被災事業者
〇有効な期間の事業継続力強化計画の認定(申請中を含む)を取得した企業
賃上げ加点 〇事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%又は3%以上増加させる計画を有し、従業員に表明している企業
〇事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円又は+90円以上の水準にする計画を有し、
従業員に表明している企業(賃金の引上げ幅に応じて段階的に加点)
〇被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

各種の計画取得では、「成長性加点」として経営革新計画のみが加点対象となり、経営力向上計画や先端設備等導入計画、地域経済牽引事業計画は対象外となりました。
「災害加点」として事業継続力強化計画が継続して対象となっており、この認定申請は必須と言えるのではないでしょうか。
公募が始まると忙しくなってきますので、加点を確実に取るために、今から経営革新計画や事業継続力強化計画の申請を進めておくのも良いかもしれません。
「賃上げ加点」については、これまでよりも給与支給総額の増加率が高くなっています(従来は1%以上増加)。また、地域別最低賃金との比較や社会保険適用といった新しい条件も加わっています。

また、減点要件も規定されているので気を付けましょう。
過去3年間に、次の「ものづくり補助金」の交付を受けた事業者は、審査の際に減点が行われます。
該当する場合は、審査のハードルが高くなると思われますので、計画書の内容を十分に検討しておくことが必要があるかもしれません。

<減点対象補助金>
 平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援事業
 平成29年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業
 平成30年度2次補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業
 令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業

補助率3分の2は小規模事業者のみ

事業類型とそれぞれの補助金額と補助率は次のようになります。

事業類型 補助上限額
(補助下限額)
補助率

【一般型】

新製品・新サービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資及び試作開発を支援

1,000万円

(100万円)

・中小企業:2分の1
・小規模事業者:3分の2
【グローバル型】

海外事業(海外拠点での活動を含む)の拡大・強化等を目的とした設備投資等の場合、補助上限額を引上げ

3,000万円

(100万円)

・中小企業:2分の1
・小規模事業者:3分の2
【ビジネスモデル構築型】

中小企業30者以上のビジネスモデル構築・事業計画策定のための面的支援プログラムを補助

1億 円

(100万円)

・支援者定額補助

事業類型では、「小規模型」がなくなり、これまでの「一般型」に加えて、補助上限額がアップした「グローバル型」と「ビジネスモデル構築型」という新しい類型が登場します。
(グローバル型とビジネスモデル構築型については、現時点では詳細な内容がわかりませんので、ここでの説明は省略します。)

これまで「先端設備等導入計画」の認定を取得することで、補助率を3分の2にすることができましたが、新しい制度では、小規模事業者のみが補助率3分の2の適用となります。
中小企業の場合は補助率が2分の1のみとなりますので、投資資金の計画などで注意が必要となるかもしれません。

申請要件をクリアできなければ補助金を返還

新しくなる「ものづくり補助金」では、申請する時点で、事業計画期間(3~5年)において給与支給総額と付加価値額を一定率以上増加させることを従業員に表明する必要があります。
そして、この申請要件の実効性を担保するため、補助金の返還規程が設けられます。
交付決定後にこれらの表明をしていないことが発覚した場合や、補助事業計画終了後に給与支給総額の増加目標を達成できていない場合は、補助金の返還を求められます。

補助事業の成果を確実に上げることが、これまで以上に厳しく求められるようになりますので、事業計画の内容をさらに入念に練り上げる必要があるでしょう。甘い計画では、採択を得られたとして、後で痛い思いをするかもしれません。

以上、事務局の公募要領を基に、今年実施の「ものづくり補助金」を検討する上で重要と思われる4つのポイントを挙げてみました。
特に、申請が常時受け付けられ、3カ月程度に1回ずつ採択発表する方式に変わったことは朗報だと言えます。

「ものづくり補助金」の申請は、自社の強みや投資計画の有効性を検討しブラッシュアップする良い機会になります。
これまで申請したことのなかった事業者も、今年はぜひ「ものづくり補助金」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

【ご注意】当コラムの内容は公開された募集要領から独自に解釈したものです。
事業内容が実際とは異なる場合もあります。正式な事業内容については事務局から発表される公募要領で必ずご確認ください。

<資料>
●独立行政法人中小企業基盤整備機構・令和元年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」に係る事務局の公募
(公示日:2020年1月20日)
https://www.smrj.go.jp/org/info/solicitation/2019/favgos0000009ybj.html

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