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補助金・助成金の申請代行は誰に頼むべき?専門家の選び方と注意点

補助金と助成金の申請代行

補助金・助成金を申請したいと考えたとき、課題となるのが「申請やその後の手続きをどうやって行うか」という点です。

中には、知り合いなどから「自分は専門家に頼まずに通した。誰でもできる」などと言われたことがある方もいるかもしれません。しかし、多くの申請者は、専門家の支援を受けて申請しています。

この記事では、専門家に頼む意義や、依頼する場合の選び方などを解説します。

補助金・助成金の申請代行

専門家に頼らず、自社申請をする事業者もいるのは事実です。しかし一般的には、専門家に依頼し、きちんと支援をしてもらったほうが、より採択されやすくなります。

まずは、自社での申請が難しいと言われ、専門家に依頼する人が多い理由を明らかにします。

自社で申請するのはなぜ難しいのか

自社で申請し、採択を受けて入金までの手続きを行うのは、非常に難しいと言えます。

また、仮に可能であったとしても、そのために人を雇ったり、事業主の貴重な時間を使ったりするよりも、専門家に頼む方が効率が良いと言えるでしょう。

そのように言える理由には、下記のようなものがあります。

補助金の申請要件が難しい

補助金・助成金の申請では、「要件を満たしていること」を示すのが最も重要かつ大前提のポイントになります。

また、他の事業者に比べて優れた計画であることを示さなければならない補助金では、特に審査のポイントになる部分で優れていることを示す必要があります。

ところが、多くの補助金・助成金ではこの「要件」や「審査ポイント」の数が非常に多い上、「どのように満たしているのか」まで書かなければならない項目も多いのです。

公募要領のあちこちに書かれている要件や審査ポイントをすべてピックアップし、満たしていること、優れていることを記述するのは、簡単なことではありません。

補助金・助成金で使われる用語が分かりにくい

補助金・助成金の審査は、行政側の論理で行われます。

「お役所の使う言葉や論理は、経営者とは違う」「お役所の文化は自分たちとは違う」。そう感じたことがある方は少なくないでしょう。

しかし申請では自社の取り組みを、そういう人たちにも分かるように書かなければならないのです。

経営者同士なら伝わるものでも、そのまま審査に使えるかどうかはまた別のお話になります。両方の言葉を理解できる人でなければ、うまく伝えるのは難しいのです。

必要書類が多く複雑な手続き

「びっしり詰まった文字を読んだり、難しい書類を扱ったりするのは苦手」という経営者は珍しくありません。

業種によっては普段の業務でそれほど書類を扱う機会がなく、社員も含めて得意な人がいない場合もあります。

補助金・助成金の申請では、形式も内容も整った正しい書類を揃えなければなりません。

中には決算関係や経営そのものにかかわる書類など、一介の事務員に扱わせることをためらうようなものも含まれます。

いざ申請というときに「アレがない、コレがない」では、締切に間に合わないことも。さらに、せっかく提出しても、証明書の種類が間違っていたり、法定の書類に重大な不備があったりしたら、審査で落とされてしまいます。

専門家に依頼するケースが多い理由

では、書類を扱うのが苦ではなく、難しい内容もじっくり向き合って解決できるような経営者であれば、自社申請で十分と言えるでしょうか?

そうとも言えません。専門家に依頼するのは「自社では難しいから」という消極的な理由だけではなく、「専門家に依頼したほうが得になる」という積極的な理由もあるのです。

申請書の書き方次第で採択率が大きく変わる

申請書にどんな項目が必要であるかは、もちろん公募要領や様式に記載されています。

しかし、その必要な項目をどのような形式で、どのような順で、どのような論理構造で、どのような図表をつけて書くか、どんな別添書類を作るかは、自由演技になります。

専門家の腕の見せ所はその部分です。より効果的な申請書類は、他社との競争があるような補助金の採択率を大きく上げます。同じ内容であっても、見せ方によって説得力が変わるのです。

制度や審査基準の理解が必要

ときには記載事項の中に、基本的な法律や制度の理解を必要とするものもあります。

たとえば一部の申請では、労働者名簿や賃金台帳を求められます。単に名前を並べた名簿や支払いの記録を出せばよいと考える方も多いのですが、実はこれらの書類の形式や内容は法律で定められているのです。提出した書類がその形式を守っていないものであれば、不備扱いになります。

また、審査がどのような基準で行われるかを理解するのにも、特殊な知識が必要です。

その補助金・助成金がどのような位置づけやねらいで行われているのか、個別の補助金・助成金が重視しているポイントは何か、そんな部分の理解も、書類の精度に影響してきます。

これを個人が手に入れるには時間もかかり、経験してみなければ分からないこともあります。せっかく頑張って手に入れても、その知識は自社の1回しか使えません。

一方専門家は複数の事業者を支援しているので、学ぶ機会も多い上、その知識を何度も使って、1回あたりのコストを下げられるのです。

金額が大きい(数百万円〜数千万円)案件ほど専門性が重要

1万円の買い物と、100万円の買い物とでは、買う前にどのくらい調べるか、買うときにどのような期待をするか、まったく違うでしょう。

行政も同じで、1万円の助成金か1000万円の補助金かでは、事前に知りたいことも、期待されることも違います。申請する金額に見合った緻密さ、堅実さと、それを実現する知識・理解が必要です。

つまり、申請する金額が大きくなればなるほど、専門家の力なしに着金にこぎつけるのは難しくなると言えるのです。

補助金・助成金の申請を行う士業とは?

補助金・助成金の申請は、コンサルティング会社等が掲げている場合もありますが、主には士業が支援を行っています。

士業の中でもどのような士業が補助金・助成金に対応しているか、ここでは依頼を検討する場合のヒントを提供します。

行政書士・中小企業診断士が中心に対応

少し詳しい方は、「補助金といえば中小企業診断士」というイメージが大きいかもしれません。

実際に補助金の申請において、現状で中小企業診断士が支援を行っている場合は非常に多いと言えます。

しかし、厳密には補助金の「申請代行」や「申請書類の作成」は行政書士のみができる分野です。

中小企業診断士は、補助金のために限らない一般的な事業計画の作成や、事業者が作成した計画へのアドバイスができるにとどまります。

これまでよりも厳しく判断できるように行政書士法が改正されるため、今後は行政書士が補助金申請支援の中心となるかもしれません。

ただ、行政書士でも経営支援全般を専門とする人はいますが、資格試験の内容からすれば中小企業診断士の方が、経営に関しては専門的な知識を持っています。

申請に直接関係する部分は行政書士に任せるとしても、事業計画について中小企業診断士の意見を聞くのもよいでしょう。

税理士や社会保険労務士が対応するケースも

補助金・助成金の文脈で、税理士・社会保険労務士も関わるケースがあります。どのような場合に関わるのか、それぞれの専門性によって変わってきます。

事業全体のアドバイスができる税理士

お金に関することというところで、税理士も補助金申請に関わることがあります。しかし、中小企業診断士と同様、補助金専用の書類を作成したり、申請そのものを代行したりすることは違法です。

税理士には、補助金のための書類というよりも、補助金を含む事業全体の会計のアドバイスや、資金繰り全般の相談を行うと良いでしょう。

専門の助成金が存在する社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)は、他の士業とは少し話が違ってきます。社会保険労務士だけが扱える助成金が存在するからです。

行政書士と社会保険労務士は、「その補助金・助成金が、どの法律に基づいて行われているか」によって棲み分けています。

しかし、一般の方が、補助金・助成金のもとになっている法律を確かめるのは困難です。

ごく簡単な見分け方としては、「厚生労働省が行っている助成金は社会保険労務士」「中小企業庁ベースの補助金は行政書士」と考えるのが良いでしょう。

士業でも全ての補助金に対応できるわけではない

上記で見てきたとおり、すべての士業=補助金・助成金というわけではありません。改めてまとめると、以下のとおりです。

士業の種類 対応
行政書士 〇原則として補助金全般

〇一部の助成金(主に都道府県・市区町村等が行うもの等)

✕主な助成金(厚生労働省が行うもの等)

社会保険労務士 〇助成金(主に厚生労働省が行うもの等)

〇補助金のために限らない一般的な事業計画の作成

〇事業者が作成した計画へのアドバイス

✕(原則)補助金の書類の作成

✕(原則)補助金の申請代行

中小企業診断士

税理士

その他の士業

コンサルタント

〇補助金のために限らない一般的な事業計画の作成

〇事業者が作成した計画へのアドバイス

✕申請代行

✕提出する補助金・助成金書類の作成

もしどの士業に相談するか迷ったときは、どの士業でも良いので「この補助金・助成金を申請したい」と伝えてみてください。
士業同士もお互い紛らわしいことは理解しているので、間違っていれば正しい士業に案内してくれます。

実績のある専門家を見つけるのは難しい

どの士業にも複数の「専門分野」があります。

補助金・助成金を扱うことができる士業であっても、実際に補助金・助成金を専門分野として関わっているかどうかは別の話です。このため、該当の士業であれば誰でも良いというわけにはいきません。

良い専門家に出会うには、補助金・助成金を業務に組み込み、しかも実績がある士業を探す必要があります。しかし、これが意外と難しいのです。

補助金・助成金の種類が多く、得意分野が異なる

補助金・助成金申請を依頼する上での「落とし穴」は、単に「補助金が得意」「助成金申請を受付」という宣伝文句だけでは、どれがどのくらい得意か分からないところです。

世の中には多くの補助金・助成金が存在します。どのような種類の制度を得意としているかは「人それぞれ」ですが、そこまで細かくは掲げていないことも多く、一見して自分が申請したいものに合っているかは分かりません。

また、補助金・助成金は年度によって、制度がガラリと変わることがあります。

実績が公表されていても、「実績のどの部分が、自分に関係した部分なのか?」は、素人にはなかなか判断できないことがあるのです。

表向きに実績を公表していない士業も多い

士業の業務は幅広く、紹介によって営業している人も多いので、実績があっても一般に見える場所では公表していない士業がたくさんいます。

また、補助金・助成金をメイン業務にし、顧客を求めていたとしても、数字では実績を公表していないこともあります。逆に数字を「盛って」、たとえば申請が1件だけで、その1件が採択されたために100%と記載しているようなことも考えられます。

各専門家が公式HPなどで公開している範囲の情報だけでは比較もしにくく、正しいニュアンスをつかむのも難しいでしょう。

ポータルサイトで採択実績の多い専門家を探すのがおすすめ

そんな中、専門家を探す際に役に立つツールの1つが、補助金・助成金に関するポータルサイトです。

ポータルサイトに登録している専門家の中から依頼先を探すメリットは、主に3つです。

まず第1に、ポータルサイトに登録している専門家は、補助金・助成金の業務に注力していることが確実です。膨大な数の専門家の中から補助金・助成金に特化した専門家に絞れるだけでも、大きな効果があります。

第2に、ポータルサイトでは「同じ条件」で専門家を比較することができます。

サイトの登録項目や記載できる長さは限られているため、「デザインで魅せる」「実績の数字を伏せて良く見せる」といった小細工なしの比較が可能です。

第3に、ポータルサイトでは専門家の種類や採択実績で絞り込めます。

サイトの機能を使って、申請したい補助金・助成金や受けたい支援に合わせた検索をし、実績が多い専門家を優先して選べるでしょう。

申請代行を依頼する際の費用と報酬の仕組み

申請支援・申請代行を考える際、最も気になるのが「費用・報酬」です。

これまで専門家の支援を受けたことがない方は、「相談に行ったら高額の請求をされるのでは」「申請しても不採択だったらお金がもったいない」などの不安を感じるかもしれません。

そのような不安は通常、杞憂に終わります。むしろ早めに相談した方が、事業者側の無駄をなくし、低コストで採択に至る可能性もあるのです。

成果報酬が中心なのでリスクが少ない

士業報酬は「着手金」と「成果報酬(成功報酬)」に分かれます。

補助金・助成金の申請に当たっても、本格的な報酬は採択された場合にのみ発生することがほとんどです。もし不採択になっても、着手金のみで済みます。

中には、不採択であった場合、同料金の範囲内や格安で再申請をするという専門家もいるくらいです。

専門家に依頼するメリットはたくさんありますが、リスクはかなり少ないと言えます。

無料相談で「通るかどうか」おおよその見込みを出してもらえる

ほとんどの専門家は「無料相談」を設定しています。

無料相談では、申請したいと考えている補助金・助成金が計画内容に適合しているかどうかや、申請したい内容が審査を通過する見込みがあるかどうかを判別してもらえます。

相談なしに通らない申請をくり返すくらいなら、早めに相談し、どこに課題があるかをハッキリさせるほうが、早くゴールにたどり着くでしょう。

もしかしたら依頼しないかもしれないと思っても、まずは無料相談をしてみるのが早道です。

着手金・成功報酬・受給後サポートの費用例

専門家に依頼した場合の費用例をいくつか紹介します。

専門家の種類 補助金・助成金の種類 補助金額 着手金 成果報酬 事後手続
行政書士 補助金 50~200万円 0円 5.5万円 5.5万円
税理士 補助金 50~200万円 5万円 10% 左記に込み
行政書士 補助金 750~4000万円 11万円 4.4% 6.6%
行政書士 補助金 750~4000万円 33万円 2%(最低55万円) 6.6万円
税理士 補助金 一律 0~15万円 5~10% 顧問契約で対応
社会保険労務士 助成金 一律 0円 15%
社会保険労務士 助成金 一律 0円 10%~20%

※社会保険労務士扱いの助成金には、原則として事後手続のしくみがありません。

実際の費用を確認する際は、「採択までなのか、事後手続きも含まれるのか」「不採択の場合の再申請の費用はかかるか」もチェックしておきましょう。

補助金・助成金の申請代行を成功させるコツ

専門家に依頼すると言っても、いつでも誰にでも丸投げすれば良いというわけではありません。申請から着金までを首尾よく成功させるには、ちょっとしたコツが要ります。

この記事の最後に、専門家に依頼する際に役に立つポイントをお届けします。

早めに相談してスケジュールを確保する

いくら専門家でも、魔法のように一瞬で申請書類を生み出せるわけではありません。

しかも、自社のことなら「社長が頭の中のことを書きだせば済む」かもしれませんが、専門家ではそうはいきません。これまでの事業の様子から今後の計画まで、大抵は初めて知る内容を聞き取って、まとめ直さなければならないのです。

その分、申請準備には時間が必要です。

ときどき、自社でやろうとしたもののうまくできず、申請期限のギリギリ直前になって専門家を探す方がいます。言うまでもなく、これは得策ではありません。

引き受けてくれる士業が見つからなかったり、なんとか見つかっても採択には至らなかったりします。

専門家に依頼するかどうかは早めに判断し、余裕を持ったスケジュールで依頼しましょう。

実績報告・返還リスクにも対応してくれる専門家を選ぶ

助成金は審査後すぐに着金で終了になる場合も多々ありますが、補助金の場合、「採択」の後にも、そして「着金」の後にまでも、面倒な手続きが盛りだくさんです。

また、補助金・助成金どちらも、手続きに誤りや漏れが発生したり、万が一申請段階で不正があったとみなされたりすると、受け取った後でも返還を命じられる可能性があります。

しかし、採択・受給の後の手続きは、そもそも対応していない専門家や、対応のためには顧問契約が必要とする専門家もいるのが現状です。

あらかじめ対応可否を確認し、これらの手続きとリスクにも対応してくれる専門家を選ぶほうが、申請段階から安心して任せられます。

報酬についても、採択後の手続きを申請時の報酬額に含めるか、別契約とするかは、専門家ごとにさまざまです。依頼する際は、提示された報酬にどこまでの手続きが含まれるか、しっかり確認することをおすすめします。

中には高すぎる報酬を請求する「悪質」と言われるようなコンサルタント・士業も存在し、中小企業庁から苦言を呈されていたこともあります。

依頼を検討する際には複数の専門家を比較し、サービスの内容や実績に合った、全体として納得できる報酬の専門家を選びましょう。

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補助金と助成金の違い!初心者にもわかりやすく解説

補助金と助成金

補助金と助成金は、同列に語られることもあれば、異なるものとして語られることもあります。

実際に「補助金」と「助成金」の2つの言葉は混同されがちです。また、両方の要素をあわせ持った中間的な制度も存在しています。

補助金と助成金の違い

国の制度を中心とした原則的な分け方をベースにして、補助金と助成金がそれぞれどんなものと言えるかを見ていきましょう。

補助金

補助金はその名の通り、特定の事業を「補助」します。

事業者の「挑戦したいが金銭的な不安がある事業」と国の政策の方向性が合致する場合に、その事業の費用の一部を補助し、金銭的な負担を減らそうとするものです。

補助額は制度によりさまざまですが、多くは百万円以上、場合によっては数千万円規模まで存在します。

通常、補助金を使って行う内容は、それ自体で利益が上がる可能性がある事業的取り組みです。設備を刷新して効率化する、新しい事業を始めて経営を立て直す、広告宣伝を行って顧客を拡大するなどがあります。

このような事業的な取り組みの内容や効果は、事業者によって大きく違ってきます。国としては、できるだけ良い事業に効率よく「投資」したいところです。

そこで補助金では、一部の例外を除き、他の事業者と比較するプロセスを経て、誰に補助金を渡すか選び出すものが多くなっています。

また、具体的な出費に対して補助をするため、利用できる費目が決まっていて、あらかじめ何を購入するかを伝える方式です。

補助金は、国においては中小企業庁が主に行っています。

ただし、各補助金の事務局は通常の行政機関の窓口とは別に設置され、一部の補助金ではその運営が民間事業者に委託されていることもあります。

助成金

助成金は、国や行政が奨励する内容を事業者が実行した場合に金銭を支給するものです。金額は数十万円程度が一般的です。

東京都など地方自治体では、同様のしくみのものを「奨励金」と称していることもあります。

助成金の対象となるのは「国がお金を出してでもやってもらいたいこと」であり、「お金を出さなければなかなかやってもらえない、直接の収入にならないこと」でもあります。

例えば、雇い手が少ない属性の人を雇ったり、雇用に関する社内制度を改善したり、働く人の収入を増やしたりといったことです。

助成金は行う内容に事業者ごとの差が出にくいため、特に比較はせず、条件を満たしさえすれば支給されることが多いのも特徴です。

ただし、予算が尽きたことを理由に早期に締め切られることはあります。

具体的な費目の申請が必要な場合もありますが、多くは費目を限らず、条件を満たすだけで一律に支給されます。

国では、雇用に関する改善を担う厚生労働省が、さまざまな助成金を実施しています。ハローワークや労働局などの行政機関の常設の窓口が、直接担当していることが多いです。

補助金と助成金の共通点と相違点

補助金と助成金、それぞれの説明をもとに、共通点と相違点をまとめてみます。

ポイント 補助金 助成金
内容の事業性・収益性 あり なし
具体的な使い道(費目) 必要 不要のことが多い
金額 数十万円~数千万円以上 数万円~数百万円程度
他の事業者との競争性 アリが多い ナシが多い
主な取り扱い省庁 中小企業庁 厚生労働省
運営・事務 専門の事務局設置 行政機関の窓口

必ずとは言えないのが難しいところではありますが、一般に補助金は「競争を経て選ばれた事業のうち、一定の費目に使ったお金の一部を補助するもの」と言えます。

これに対し助成金は「国や行政がやってほしいと思っていることを推進するために、条件を満たす取り組みをした事業者に決まった額を支給するもの」との理解が一般的です。

補助金の特徴と代表的な制度

ここからは、具体的な補助金制度を見ながら、補助金の特徴を捉えていきます。

現在、国が行っている主な補助金として、小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金の3つを掲げました。共通点、相違点を見ていきます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、補助額50万円を標準とする、例外的に小さな補助金です。

最大でも200万円程度のため、大きな設備には使いにくい反面、小回りが利きます。小さめの機材や、チラシ・ポスター・展示会などのリアル集客ツールにおすすめです。

補助金制度の原則にならい、競争制で、特定の費目に使った費用が補助されます。金額が小さいこと以外は、ごく一般的な補助金のしくみと言えます。

ものづくり補助金

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)では、条件により750万~4000万円の補助が行われます。

単価50万円以上の機械・装置を必須としているため、高額な機材を要する事業の方におすすめです。

中小企業庁によるもので、補助対象の事業者は競争によって選ばれ、専門の事務局が対応しています。金額的にも制度的にも、モデル的な内容の補助金です。

IT導入補助金

IT導入補助金は、同じ中小企業庁によるものですが、国の補助金の中ではかなり変わった制度構造になっています。

まず、ここまでに挙げた2つと異なり、競争がありません。不採択のシステムはあるものの、他の事業者と比べてどうかではなく、要件を満たしているかがポイントになっています。商品の販売事業者が申請に関わるしくみも、他とは大きく違っています。

あらかじめ対象となる「商品」がリスト化されたカタログ方式が採用されているのも、補助金の中ではどちらかといえば珍しいと言えます。

実際にかかった費用の一部が補助される方式である点と、専門の事務局が設置されている点では、補助金らしさが感じられます。

助成金の特徴と代表的な制度

続いて、有名な助成金の制度をいくつか見て、補助金との違いを明らかにしていきます。

ここで取り上げるキャリアアップ助成金、両立支援助成金、業務改善助成金は、いずれも厚生労働省が行っているものです。特にキャリアアップ助成金は、聞いたことがある方も多いことでしょう。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、個別の雇用と社内の雇用関係制度に関するさまざまなステップアップを奨励し、実践した事業者に一定額を支給するものです。非正規雇用から正規雇用へ、社会保険適用外から適用へ、などがあります。

申請のコースや金額の算定方法が複雑なため、一概にいくらもらえるとは言えません。しかし、通常は人数や加算も加味して、少なくとも数十万円程度を受け取るように、取り組み内容を調整する場合が多いと考えられます。

この助成金は、競争がある補助金とは違い、条件を満たし、期間内にきちんと手続きを踏めば、必ずもらえます。

振り込まれる助成金は必ずしも何らかの費用に対するものと明記されているわけではありません。したがって、何にいくら使ったか、詳細な会計報告は不要です。

ただ実際には、条件を満たすための取り組みに費用がかかるため、「単にお金が増える」ことにはなりません。また、賃金台帳など雇用に関するお金の報告は行うことになります。

両立支援助成金

両立支援助成金は、育児・介護・不妊治療などをしやすくするような体制整備をしたり、適切に休業させたりした事業者に支給される助成金です。

それ自体で収益になるような内容ではなく、むしろ事業者にとっては負担にもなるような内容を条件としている点で、キャリアアップ助成金と並んで典型的な助成金と言えます。

詳細な費目の指定がないこと、しかし取り組みのために費用・手間がかかるため結果として費用補助の性格になる点も、キャリアアップ助成金と変わりません。

厚生労働省はこのようなしくみの助成金を他にも多く出しています。

業務改善助成金

上の2つに対し、業務改善助成金は補助金的な要素が強い、珍しい助成金です。

生産性向上に関する設備投資を条件とし、詳細な費用と効果の報告を求めている点、特定の費目に対する補助の形で支給される点は、非常に補助金的と言えます。

一方で、それと同時に賃金の引上げを条件に加え、上限額も引上げ人数に応じて決まる点は助成金的です。他の事業者との競争もありません。

国の制度としては他に類を見ないタイプの助成金であり、申請を行うには「雇用関係制度」と「経営」、両方の専門性が必要です。

補助金と助成金を活用する際の注意点

ここまで、補助金と助成金の主な違いや、一般的な制度内容について見てきました。補助金と助成金の中間のような制度もあるものの、全体的な傾向としては、それぞれどのようなものを指すかが見えてきたのではないでしょうか。

最後に、実際の申請を検討するにあたっての注意点をお伝えします。

名称だけで判断しない

最初にも少し触れたとおり、「補助金」「助成金」という言葉が使われていても、両方の要素を持っていたり、少し変わった内容が含まれていたりします。

名前だけで内容を判断せず、公表されている要領に目を通す、専門家に相談するなど、実際の条件を確認することが大切です。

負担なしでお金がもらえるわけではない

補助金にも助成金にも共通して言えるのは、「負担なしでお金がもらえるわけではない」ということです。

補助事業や助成金に伴う制度整備では、物品やシステムの購入、専門家への依頼などに費用がかかるだけでなく、維持管理の費用が発生する可能性もあります。

賃上げや正社員化は、当座の費用は少なく見えるかもしれません。しかし、いったん上げた雇用条件を戻すのは難しいため、今後ずっと費用がかかり続けるのです。

補助金であろうと助成金であろうと、目先の補助額・助成額に囚われるのではなく、現実の自社ができる範囲で考えることが大切です。せっかく取り組んでも、完遂できなければお金がもらえないこともあります。

本来の事業は自力で頑張りつつ、「ちょっとの背伸び」や「イメージアップ」のために自社に合った制度を探し、利用する。それが補助金・助成金活用の成功の秘訣です。

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IT導入補助金2025の申請方法や条件について解説!

IT導入補助金

補助金制度の中でも特に人気が高いのが「IT導入補助金」です。毎年、国の予算が組まれ、継続的に実施されている制度です。

2025年度も「IT導入補助金2025」として受付がスタートしています。

補助金制度は事業者が日常的に利用するものではありません。

「IT導入補助金って何に使えるの?」
「他の補助金より通りやすいって本当?」

といった疑問や、制度の詳細まで理解できていない方も多いのではないでしょうか。

たしかに、IT導入補助金は比較的活用しやすい制度です。しかし、その原資は税金であり、申請内容や使い道には厳格なルールがあります。適切に活用しなければ「不正受給」とみなされる恐れもあります。

そこで今回は、IT導入補助金2025を検討している方に向けて、申請条件や活用のポイントをわかりやすく解説していきます。

制度を正しく理解し、有効活用するための参考にしてください。

IT導入補助金とは?

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の費用を国が一部補助する制度です。

業務効率化や生産性向上、またインボイス制度への対応などを目的としています。ソフトウェア、クラウドサービス、業務支援ツールなどが補助対象となります。

申請には、事前に登録された「IT導入支援事業者」を通じて手続きを行う必要があり、単独での申請はできません。

また、補助額や補助率は導入するツールの内容や事業規模により異なります。毎年制度の内容や条件も更新されるため注意が必要です。

2025年度も予算が確保されており、例年同様に通常枠やインボイス対応枠など複数の類型が用意されています。

IT導入補助金を活用することで、初期費用の負担を軽減しながら、業務のDX(デジタル化)を進めることができます。

他の補助金制度と比較して、「交付決定事業者の多さ」や「様々な事業者が活用できる」点が特徴的です。

交付決定事業者が多い

一般的な補助金制度はあまり知られておらず、対象となる事業者であっても申請されていないケースが少なくありません。

しかし、IT導入補助金は名称もキャッチーで知名度が高く、実際の申請数・交付決定数も多いのが特徴です。

たとえば、2025年6月18日に締め切られた第1次公募の実績は下記のとおりです。

区分 申請件数 交付決定数
通常枠 2,979 1,511
インボイス枠(対応類型) 6,446 3,710

 

申請件数・採択件数ともに高い水準であり、他の補助金と比べて活用のハードルが低いことがわかります。

地方自治体の補助金などは予算の都合ですぐに募集が締め切られてしまうこともありますが、IT導入補助金は複数の締切日が設けられており、継続的に申請・交付が行われているのが大きな特徴です。

様々な事業者が活用できる

IT導入補助金は、業種や業態を問わず、幅広い事業者に利用されているのが特徴です。

現在では、業務のデジタル化・効率化があらゆる業種に求められています。製造業、建設業、小売業、医療・福祉業など、いわゆる「レガシー産業」でもITツール導入が進んでいます。

たとえば、勤怠管理システムや販売管理ソフト、会計ソフト、受発注管理システムなどは、業種を問わず導入のニーズが高いといえます。

こうしたツールを導入する際にIT導入補助金を活用することで、コストを抑えながら業務改善を図ることができます。

IT導入補助金の対象者と対象条件

補助金制度は要件が複雑でわかりづらく「自分の会社が対象かどうか分からない」「手続きが大変そう」といった理由で、申請をあきらめてしまうケースも少なくありません。

まずは簡単に、IT導入補助金の対象者と対象条件について見ていきましょう。

申請対象となる事業者

IT導入補助金は、主に中小企業や小規模事業者を対象としており、基本的に大企業は対象外です。

目的は、ITツールの導入にハードルを感じる中小規模の事業者を支援することにあります。

対象となるのは法人だけでなく、個人事業主の方も含まれます。たとえば、飲食店経営者やIT系フリーランスの方などにも活用実績があります。

要件は業種によって異なり、たとえば建設業の場合は「資本金3億円以下または従業員300人以下」が対象です。

ほかにも複雑な条件があるため、不安な場合は専門家に相談しながら進めるのがおすすめです。

また、IT導入補助金2025の公式サイトでは、「申請対象者チェッカー」が用意されています。

組織形態と業種を選ぶだけで自社が対象かどうかを簡単に確認できるのでチェックしておきましょう。

対象となる経費・ITツールの例

IT導入補助金は、どんなITツールにも使えるわけではなく、「IT導入支援事業者」として事務局に登録されたツールのみが対象となります。

そのため、いくら自社にとって良さそうなツールであっても、登録されていない場合は補助金の対象外となるので注意が必要です。

利用を検討しているツールが対象かどうかは、IT導入補助金の公式サイトにある「ITツール・IT導入支援事業者検索」で事前に確認しておきましょう。

対象となる経費の例としては、ソフトウェア・クラウドサービス・ハードウェアなどがあります。

なお、パソコンなどのハードウェアも補助対象になることはありますが、類型や条件によって制限があるため、必ず事前に確認しておきましょう。

IT導入補助金2025の申請方法を解説

申請に必要な準備

gBizIDの取得

まず、IT導入補助金を申請の検討をしている方は、早めにgBizID(ジービズアイディー)の取得をしておきましょう。

gBizIDとは、経済産業省が提供するオンライン申請共通アカウントです。補助金の電子申請を行う際に使用します。

必要なのは「gBizIDプライム」という最上位アカウントであり、取得には印鑑証明書と申請書の郵送提出が必要です。

原則として登録の代行ができず事業者本人が手続きをしなければなりません。また、申請から発行までは1〜2週間程度かかるため、早めの準備がポイントです。

gBizIDは、一度取得しておけばIT導入補助金以外の国の補助金申請でも使用できます。

セキュリティアクション宣言

gBizIDの取得に加えて「セキュリティアクション」の宣言も必要です。

セキュリティアクションとは、独立行政法人IPA(情報処理推進機構)が推進する、中小企業の情報セキュリティ対策を促進する制度です。

申請に必要なのは「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかの宣言です。多くの場合は★一つ星で要件を満たします。

宣言の手続きは無料で行うことができ、所要時間は10〜15分程度。

専用サイトから必要事項を入力・申請すると、宣言済みロゴを取得できます。

ITツールの導入はセキュリティリスクにも直結するため、情報セキュリティの取り組みを事前に表明することが補助金申請の要件となっています。

まだ宣言していない場合は、gBizIDの取得と並行して進めておきましょう。

事業計画書の作成

IT導入補助金の申請には、事業計画書の作成が必須です。

とはいえ、具体的な書き方はIT導入支援事業者(ITベンダー)と相談しながら進めることができるため、専門的な知識がなくても心配は不要です。

ただし、スムーズに計画書を作成するためには、事前に下記の点を整理しておくのがよいでしょう。

  • ITツールを導入したい目的
  • 導入後に、どんな効果(業務効率化・コスト削減など)が期待できるのか
  • ツール導入によって、事業全体にどのような利益をもたらすか

自社の現状を棚卸しておくと、情報を整理しやすくなります。

また、補助金の交付後には実績報告の提出も必要になるため、事業計画書はできるだけ具体的かつ丁寧に作成しておくと、その後の手続きにも役立ちます。

導入予定のITベンダー(IT導入支援事業者)との相談

特定の気になるITツールがある場合は、提供元や提携しているIT導入支援事業者に相談しましょう。
多くのツールでは、公式サイトに「IT導入補助金対応」などの記載があり、補助金に関する相談窓口が用意されています。

問い合わせれば、申請の流れや必要な準備について案内してくれます。

また、IT導入補助金2025の公式サイトには「IT導入支援事業者検索ツール」が用意されています。

たとえば、「freee」などのキーワードで検索すれば、そのツールの導入支援を行っている支援事業者の一覧が表示されます。その中から、支援事業者を選んで相談を進めましょう。

なお、弊社でも最適なITツールや支援事業者のご紹介が可能です。ツール選定でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

申請の流れ

ITベンダーとスケジュールと事業計画の策定

導入予定のITツールとITベンダー(IT導入支援事業者)が決まったら、補助金の申請に向けて、スケジュールや事業計画の策定を進めていきましょう。

ITベンダーは、複数の事業者への導入支援を行っており、申請から導入・実績報告までの流れを熟知しています。そのため、スケジュール調整や書類作成もスムーズに進められます。申請者側の負担は大きくないので安心です。

事業計画の中では、導入するITツールによってどのような効果が見込まれるのか、導入後の運用方法や事業への影響について事務局へ伝わるようにまとめる必要があります。
また、IT導入補助金の細かい制度内容や不明点がある場合も、ITベンダーに相談すれば具体的なアドバイスが得られるので、不安な点は早めに確認しておくのがよいでしょう。

申請フォームから電子申請(ITベンダーが代理申請)

IT導入補助金の申請は、ITベンダー(IT導入支援事業者)と申請者が共同で行う形になっています。

電子申請は、ITベンダーが代理で行いますが、申請者側でも一部作業が必要となるため、事前に人員やスケジュールを確保しておきましょう。

基本的には、ITベンダーの指示や申請スケジュールに沿って手続きを進めていくことになります。

過去の申請実績があるベンダーであれば、全体の流れをスムーズに誘導してくれるので安心です。

ただし、申請には多くの書類が必要であり、内容に不備があると事務局から確認や差し戻しが入ることもあります。

その場合、審査や交付決定までに時間がかかってしまうこともあるため、書類は丁寧に準備し、正確に提出しましょう。

採択通知の受領

申請内容に問題がなければ、事務局から採択通知が届きます。この通知をもって、正式に補助金の対象として認められたことになります。

注意すべき点として、IT導入補助金は「事前着手禁止型」の制度です。

つまり、採択通知が届く前にツールの導入や費用の支払いを行った場合、その経費は補助金の対象外となってしまいます。

補助金を確実に受け取るためには、必ず採択通知を受領してから契約・導入・支払いを行うようにしましょう。

このタイミングを誤ると、補助金を受けられなくなるため十分注意しましょう。

ツールの導入・支払い・実績報告

採択通知を受け取った後は、正式にツールの導入や支払い手続きを進めます。

この際に領収書や契約書、請求書などの証憑書類は、実績報告で提出が求められるため、紛失しないように大切に保管しておきましょう。

IT導入補助金は後払い方式のため、申請者が一度全額を支払う必要があります。

ツールによっては、数十万円〜百万円を超える出費になることもあるため、キャッシュフローには十分な注意が必要です。

万が一、補助金が交付されなかった場合でも、事業に支障が出ないように、導入前に財務状況をしっかりと確認しておくことが重要です。

補助金ありきの資金計画ではなく、現実的な予算管理を行いましょう。

補助金交付

一連の申請・実績報告に問題がなければ、指定の口座に補助金が振り込まれます。

ただし、交付された後も終わりではありません。効果報告として、導入したITツールの活用状況や効果に関する報告が求められます。

この報告を怠ると、補助金の返還を求められるケースもあるため要注意です。補助金を受け取った後も最後まで責任を持って対応する必要があります。

IT導入補助金は、ITベンダーのサポートを受けられるとはいえ、申請者側にも一定の手続きや制度理解が求められます。

スムーズな対応のためにも、社内で担当者を明確に決めておくことをおすすめします。

IT導入補助金に関するよくある質問と注意点

IT導入補助金に関するよくある質問と注意点について見ていきましょう。

採択率はどのくらいですか?

IT導入補助金の採択率は比較的高く、2025年の第1次締め切りにおいては5割を超えています。

多くの場合において、申請は専門家のサポートを受けながら行うため、要件を満たした状態で提出されることが多く、採択率も高くなる傾向にあります。

申請してからどのくらいの期間で補助金が振り込まれますか?

申請のタイミングにもよりますが、申請から補助金が振り込まれるまでには、一般的に3〜6か月程度かかります。

特に、ツールの費用を支払ってから、補助金が振り込まれるまではタイムラグがあるのでキャッシュフローに注意しましょう。

自分で申請できますか?

申請はIT導入支援事業者との共同申請となります。そのため、申請者単独での申請はできません。

対象ツールを取り扱っているITベンダーを通して進めていきましょう。

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【みんなの助成金編集部厳選】全国の先進的な企業型ふるさと納税の取組み事例

企業版ふるさと納税は、企業が地方公共団体に寄附を行うことで、法人税などの一部が控除される制度です。

通常のふるさと納税とは異なり、企業が地方創生プロジェクトを資金面から支援できる仕組みとなっており、地域の課題解決や雇用創出などに役立てられます。

寄附額の最大約9割が税額控除の対象となるため、企業にとっては実質的な負担が少なく社会貢献ができる制度として注目されています。

補助金や助成金が「行政から企業への支援」であるのに対し、企業版ふるさと納税は「企業から地域への支援」。

自社の成長には補助金を、地域への貢献には企業版ふるさと納税を活用することで、より持続的な経営が可能になります。

全国の自治体による企業版ふるさと納税の取組事例

企業として思い入れのある地域を応援するだけでなく、共感できる理念や独自の地域プロジェクトを推進する自治体を選んで寄附を行う企業も増えています。

企業版ふるさと納税は、企業の社会的責任(CSR)を果たすと同時に、地域の持続的な発展に寄与できる制度です。地方創生を進める、全国の取組事例をご紹介します。気になる方は、自治体公式サイトの取り組みをチェックしてみましょう。

 

茨城県つくば市|技術と共創で日本の未来を描く


つくば市は、宇宙開発や最先端研究で知られる学園都市として、日本の技術と科学を支える中核都市です。

企業版ふるさと納税では、スマートシティの推進や教育・人材育成、地域コミュニティの再構築など、次世代のまちづくりを支援できます。

少子高齢化など社会課題に直面する中で、つくば市は技術と人をつなぎ、地方創生の新しいモデルを創り出すリーディング都市として注目されています。
つくば市企業版ふるさと納税公式ページ:https://www.city.tsukuba.lg.jp/shisei/joho/sousei/1018744/index.html

 

北海道大樹町|「北海道スペースポート」で宇宙産業を牽引

大樹町は、民間にひらかれた商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」を中心に、宇宙産業の集積と地方創生を進める日本有数の宇宙拠点です。

約40年前から航空宇宙産業の誘致を続け、現在は町が中心となり、北海道庁や道内企業と連携して“北海道に宇宙版シリコンバレーをつくる”というビジョンを掲げています。

企業版ふるさと納税を通じて、ロケット開発や宇宙関連ビジネスの基盤づくりを支援することができます。

大樹町企業版ふるさと納税公式ページ:https://www.town.taiki.hokkaido.jp/soshiki/kikakushokoka/1/4/1/536.html

 

佐賀県佐賀市|脱炭素と資源循環を両立するバイオマス産業都市

佐賀市は「バイオマス産業都市構想」に基づき、清掃工場の焼却ガスからCO₂を分離回収し、農業や産業に再利用する世界的にも先進的な取組を行っています。

回収したCO₂は野菜や微細藻類の培養などに活用され、脱炭素と資源循環を両立する「サーキュラー・バイオエコノミー」を推進。

企業版ふるさと納税は、こうしたCO₂利活用や技術開発の支援に活用され、GX(グリーントランスフォーメーション)を進める全国のモデル都市として注目されています。

佐賀市企業版ふるさと納税公式ページ:
https://www.city.saga.lg.jp/main/60727.html

 

北海道三笠市|炭鉱のまちから「水素とカーボンリサイクルの拠点」へ

三笠市はかつて炭鉱のまちとして栄え、いまも地下に約7.5億トンの石炭資源を有する地域です。

この豊富な地下資源を活用し、地下ガス化(UCG)による水素製造や、CO₂を固定・再利用するカーボンリサイクル事業を推進しています。

室蘭工業大学との連携のもと、CO₂排出ゼロのエネルギー循環を目指す取り組みは、国内でも先進的な試みです。

企業版ふるさと納税を通じて、脱炭素・水素社会の実現に向けた技術開発や実証研究を支援することができます。

三笠市企業版ふるさと納税公式ページ:
https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/hotnews/detail/00010913.html

 

沖縄県本部町|美ら海と桜を未来につなぐまち

沖縄本島北部に位置する本部町は、「美ら海(ちゅらうみ)」の名のとおり、美しい海と豊かな自然に囲まれたまちです。西には東シナ海、東には八重岳がそびえ、春には約7,000本の寒緋桜が咲き誇ります。

しかし近年、海洋ごみや外来植物、軽石漂着などの影響により自然環境が変化しています。本部町では、サンゴ礁や海洋生物の保護、海岸清掃、桜の保全活動などを企業版ふるさと納税を通じて推進。美ら海・美ら山を次世代へつなぐ取り組みに参加しつつ、観光でもその美しい風景を訪れてみるのもいいでしょう。

本部町企業版ふるさと納税公式ページ:
https://www.town.motobu.okinawa.jp/doc/2024112700014/

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ものづくり補助金は個人事業主も利用できる?

個人事業主とものづくり補助金

ものづくり補助金は金額が大きく、個人事業主も申請できるのか不安に思う方が多いようです。

この記事では、個人事業主がものづくり補助金に申請することができる条件や、実際の採択事例、注意点などについて解説します。

ものづくり補助金は個人事業主も対象

ものづくり補助金は、「中小企業・小規模事業者(中小企業等)」を対象にした補助金です。

「中小企業等」の記載のせいで「個人事業主は企業ではないから、対象外」と考えている方も見かけます。しかし、条件を満たしていれば、個人事業主でも申請することは可能です。

個人事業主が対象となる条件

対象となる「中小企業等」の規模の範囲は、業種ごとに資本金額と従業員数で決められています。個人事業主は資本金の概念がないため、従業員数のみで判断します。

業種 従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業、その他 300人以下
ゴム製品製造業(ただし、自動車・航空機用のタイヤ・チューブ、工業用ベルト製造業は上段) 900人以下
卸売業 100人以下
サービス業 100人以下
ソフトウェア業、情報処理サービス業 300人以下
旅館業 200人以下
小売業 50人以下

また、「小規模事業者」として補助率などで優遇があるものは、以下のとおりです。

業種 従業員数
製造業、その他 20人以下
商業・サービス業 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下

従業員を雇用していること

ものづくり補助金では、1人でも従業員を雇用していないと、申請自体をすることができません。

従業員数を数える際のポイントは以下のとおりです。

従業員数に含む 従業員数からは除く
・いわゆる正社員

・アルバイト、パート

・他社に派遣している派遣社員、派遣バイト

・事業主本人

・家族従業員(いわゆる専従者)

・受け入れている派遣社員、派遣バイト

・試用期間中の人

・日雇の人

・業務委託の人

確定申告をしていること

ものづくり補助金では、必須提出書類の中に確定申告書が含まれます。

提出する確定申告書には事業所得が計上されていなければなりません。ときどき所得の種類を誤っている方がいますので、事前に確認してください。

白色の場合は収支内訳書、青色の場合は青色申告決算書もあわせて必要です。

なお、創業から間もなく、確定申告の提出時期を経過していない場合は、「(補助事業だけでない)事業全体の計画書及び収支予算書」が必要です。これには決まった様式がないので、必要なときは早めに専門家に相談したほうが良いでしょう。

開業届の提出があること

ものづくり補助金の申請にあたり、開業届の提出は必須ではなくなりました。

しかし、採択後に求められることは十分に考えられます。

開業届を出す手続き自体は簡単です。提出していなければ、申請前に提出しましょう。

届出はしたが控えをなくしてしまった、という場合は、以下の方法で入手できます。

  • 申告書等閲覧サービス
    税務署で書類を見せてもらい、撮影できます。ただし、現場の判断で撮影範囲が制限されることがあります。
  • 保有個人情報開示請求
    写しを入手できますが、2週間~1か月程度かかります。
  • 再提出
    開業届の二重提出は禁止されていません。再度提出すれば控えが手に入ります。ただし、開業日と受付日が大きく離れ、不信感を持たれる場合もあります。

個人事業主の補助額と支援内容

ものづくり補助金では、個人事業主であっても、法人と同様の条件で補助率・補助上限額が決まります。しかし、個人事業ならではの事情から、個人事業主の申請規模には一定の特徴が見られます。

実際の事例をもとにしながら、個人事業主の申請について詳細を見ていきます。

補助金額の上限と補助率

ものづくり補助金の補助率は、通常2分の1(小規模事業者に該当する場合は3分の2)です。

「最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例」を利用すれば、小規模事業者に当てはまらない事業者も補助率を3分の2にすることができます。

補助上限額は従業員数に応じ、以下のとおりです。

製品・サービス高付加価値化枠 従業員数 上限額
5人以下 750万円
6~20人 1,000万円
21~50人 1,500万円
51人以上 2,500万円
グローバル枠 一律 3,000万円

個人事業主に多い申請規模

ものづくり補助金の申請においては、法人よりも個人事業主のほうが、規模や売上などの条件が千差万別で、申請額も二極化しやすい傾向があります。

以下では、200万円程度で採択される事例と、1,000万円程度で採択される事例を見てみます。

200万円前後で採択されるケース

小規模な事業を営む個人事業主では、補助額200万円程度(補助率が3分の2であれば、実費用は300万円+税額程度)が、現実的に無理のない計画と言えます。

菓子店が包餡機を導入し、人の手では作れない繊細な新製品の販売を開始した事例や、パンの販売店がパンの種類を見分けるレジシステムを導入して効率化を図った事例があります。

この規模の申請では、必要な機材・システムを厳しく見極める必要があります。「あれも、これも」ではなく、ピンポイントで1点か2点をメインに据えて考えましょう。

高額案件(1000万円規模)の事例

1,000万円程度(実費用1,500~2,000万円+税程度)での採択は、グローバル枠での採択を除けば、個人事業主では高額なほうと言えます。

個人事業主の中でもある程度の規模がある事業者や、もともと高額機材の利用が多い、工業的な処理を伴う業種の事業者が多くなります。

この規模の申請では、高額機材・システムを複数含め、相互に関連させて、全体の効率化やまったく新しいサービスの提供を図ることができます。

たとえば、クリーニング店が一連の機器を一新した事例や、畳店が自動化のための複数の機器・ソフトウェアを導入し、生産性を2倍にした事例があります。

個人事業主の採択事例

「どんな設備・計画なら採択されるのか分からない」「自分の業種では、どんな事例があるのだろうか」。個人事業主の事例が身近にない方が多いからこそ、悩む方も多いと思います。

過去の採択事例を業種別に紹介します。

製造業での活用事例

製造業はものづくり補助金の趣旨とも相性が良いことから、多くの採択事例があります。

  • 食品製造業者が冷凍システムを導入し、食材を長期保存して計画的な製造が可能になった
  • 理論上はもっと速くできるはずだが、手元の機械の特性により実現できずにいた金属加工業者。最新機器の導入で理論値を実現し、リードタイム40分→10分へ
  • アパレル製造業者がCAD/CAMを導入。労働者の身体的負担を軽減しつつ、生産キャパシティーもUP

サービス業での活用事例

一見してものづくりや機械・システムとの関連性が低く思えるサービス業でも、ものづくり補助金の活用事例があります。

  • バッティングセンターが最新式のピッチングマシンとキャッシュレス化装置を導入し、サービスの満足度を大幅UP
  • 地方新聞の発行者が印刷関連の機器を一新。データから印刷新聞の完成までの時間を4時間30分も短縮し、内容の充実に時間を割けるようになった

小売・飲食業での活用事例

顧客単価が低めの小売業や飲食業でも、ものづくり補助金に採択され、成功した事例があります。

  • 花の販売店が鮮温庫を最新のものにし、商品を長持ちさせて廃棄や仕入頻度を減らせた
  • 消費期限の短い食品を販売している事業者が、急速冷凍設備で通信販売できるようになった

個人事業主がものづくり補助金を申請する際の注意点

審査の上での区別がなくても、実態として個人事業主と法人では違っている点も多く存在しています。

個人事業だからこその事情を踏まえつつ、少しでも採択に近づけるよう、ものづくり補助金申請時の注意点をまとめます。

法人との違い(審査で不利になる点)

個人事業と法人の間にある制度的な違いの中には、審査段階で不利になりがちな点がいくつかあります。

以下では、どのような不利になり得る点があり、また、どうすればその不利を回避することができるのかをまとめました。

資本金がない

個人事業には、会社のような「資本金」という概念がありません。

会社では資本金額に応じて信用力が高まり、融資なども受けやすくなります。また、法人では、別の出資者が出資を追加することができます。

個人事業に資本金がないということは、信用力を証明できるものが少ないということであり、事業主個人の資本が尽きたら事業も終わる可能性が高いということです。

このため個人事業の場合、「万が一」の救済措置がやや少なく見積もられます。

申請にあたっては、資金面での説得力を高める必要があります。十分な資金があり、将来的にも不足のない売上が見込めることや、すでに融資のめどが立っていることなどを、しっかりと説明しましょう。

事業体力が低い場合が多い

個人事業では法人に比べ、手持ち資金や動かせる従業員の数など、補助事業を実施する上での「体力」が低いことが多いでしょう。

このような小規模の事業者からの申請で見られるのは、「本当にこの事業者は、計画内容を実施できるのか?」ということです。

事業が小規模であればあるほど、現実的で具体的な計画を立て、審査担当者に「これだけしっかり考えているなら、できるだろう」と思わせなければなりません。

継続力が低い

法人は構成員をすげ替えれば、原理的には永遠に続けられる機関です。バトンタッチを容易にするしくみもたくさんあります。

個人事業は事業が代表者本人と強く結びつき、法人のようにスムーズにじわじわとバトンタッチを進めるようにできていません。

そこで、事業主が高齢であったり、事業に関わっている人が少なかったりする場合には、「1人で今後も続けられるのだろうか?」「後継者のめどはついているの?」と不安が生まれてしまいます。

個人事業主の申請時は、後継者の候補がいることや、事業が多くの協力者に支えられていることを示すと印象が良くなります。できれば具体的な氏名を挙げるのが良いでしょう。

よくある不採択パターン

不利になりやすい条件もあることから、「個人事業主の申請は通りにくい」というようなイメージを持っている方が多いかもしれません。

しかし、ありがちな不採択パターンを理解し、回避するようにすれば、個人事業主であっても採択される可能性は十分にあります。

事業計画が具体性に欠ける

過去の成功事例に触れた結果、成功事例をまねれば採択されると考え、無理な計画を立ててしまう事業者さんがいます。

しかし、まねをして立てた計画は、規模や資金の面で実現可能性が見えなかったり、具体的な手順があいまいであったり、これまでの事業との結びつきが薄かったりします。たくさんの事業計画を見ている審査担当者からはそんな実体のなさが「バレバレ」で、不採択になってしまいます。

他社の事例はあくまでも「参考」にとどめましょう。これまで取り組んできた、よく知っている事業をベースに、具体的で実行可能な計画を立てるのが採択の近道です。

補助対象外の経費を計上している

補助対象外の経費を補助金申請額に計上して不採択になる事例は、非常に多いと言えます。

これを避けるため、重要なポイントは2つあります。

1つは、補助対象経費の範囲について、漏れなく把握することです。公募要領では表だけではなく、他の部分や小さな注意書きにも、対象外経費について触れている部分があります。読みこなせないときは専門家を頼りましょう。

もう1つのポイントは、補助対象外経費が発生する場合の明記です。

事業計画に説得力を持たせるために販促やリフォームについて触れるなど、補助対象外経費について言及するのは構いません。ただその際は必ず、①補助対象外経費であると認識していること、②その費用については自費で負担する(できる)こと、この2点を明記してください。

他の給付金・補助金との併用制限

これまでに給付金・補助金を受けたことがある場合、ものづくり補助金も申請できるかどうか、不安に思うかもしれません。

「給付金」は、補助金と併用できます。通常、給付金は単に条件を満たせばお金をもらえるもので、使い道の制限をしていないためです。

では補助金はどうでしょうか?ものづくり補助金の具体的な併用制限を見てみます。

同時に2つはできない

①事業再構築補助金、②新事業進出促進補助金、③ものづくり補助金の補助事業を実施中の事業者は、新たにものづくり補助金に申請することができません。

「補助事業を実施中」とは、採択後、実績報告までの間にあって、辞退していないものです。

上記の3つの補助金に「16か月以内に採択された場合(辞退済みの場合は除く)」も、新たな申請はできません。また、これらの補助金の申請中にものづくり補助金を申請をすることはできますが、両方とも採択されたときは、どちらか一方を選択します。

上記以外の補助金(都道府県・市区町村の補助金など)については、ものづくり補助金の側では制限されていません。しかし、他の補助金の側で、ものづくり補助金との併用を認めていない場合があります。2つ以上の補助金に申請したいときは、両方のルールを確認しましょう。

ものづくり補助金の「おかわり」制限

ものづくり補助金は、2回以上受け取ることも可能です。

ただし、以下のような場合は申請できません。

  • 16か月以内にものづくり補助金に採択されている場合(辞退したときを除く)
  • 過去のものづくり補助金で事業を実施したが、「事業化状況・知的財産権等報告書」の提出をしていない場合
  • 過去3年の間にすでに2回のものづくり補助金の交付決定を受けた場合

申請不可ではないが減点される場合も

申請できない条件に当てはまらない限り、2回目以降の補助金申請も可能です。ただし、2回目以降では「減点」され、より厳しい審査になることがあります。

減点されるのは、以下の場合です。

  • 過去3年間にものづくり補助金の交付決定を1回以上受けたことがある場合
  • ものづくり補助金に採択されて事業を行ったものの、給与支給総額や最低賃金の目標を達成できなかった場合
  • ものづくり補助金、事業再構築補助金、その他中小企業庁が行う補助金で、賃金引上げの加点申請をしたが達成できなかった報告から18か月以内である場合(災害等によりやむを得なかった場合は除く)
  • 事業再構築補助金、新事業進出促進補助金、ものづくり補助金を受けたことがあって、直近の事業化状況報告の事業化段階が3段階以下の場合

2点目以降の減点措置は過去の成績が悪かった場合です。

計画が実現可能なものであり、かつ、手続きを怠らなければ、減点措置は防げます。すでに採択されたものがあるときは、必要に応じ専門家の手も借りながら、まずは適切に完了させることに注力しましょう。

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ものづくり補助金2025の申請について解説

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、制度の歴史が古くこれまでに多くの事業者が活用してきました。補助金額が高く、企業の事業支援だけでなく、日本経済を支える重要な制度として活用されています。

「ものづくり補助金は要件や審査が厳しいので活用しにくい」と思っている事業者の方も多くいらっしゃるかと思います。今回は、みんなの助成金編集部が、ものづくり補助金制度の概要と申請方法について解説していきます。

ものづくり補助金にご興味のある方はお気軽にご相談ください。

ものづくり補助金とは

一般に「ものづくり補助金(もの補助)」と呼ばれる補助金は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。

中小企業や小規模事業者(個人事業主を含む)の設備投資・海外進出を主として、規模や申請枠により、最大数千万円もの補助を受けられます。

二つの申請枠

ものづくり補助金には、現在2つの申請枠が用意されています。それぞれ必要な条件や内容が異なり、向いている事業者さんも違っています。

過去の申請枠とは条件が変わっているところも多いです。新たに申請を検討する場合、必ず最新の申請枠の条件を確認しましょう。

製品・サービス高付加価値化枠

製品・サービス高付加価値化枠は、国内での事業が中心の事業者さんのための枠です。付加価値額や賃金の増加といった「基本要件」を満たしていることが必要になります。

この申請枠では新製品・新サービスの開発が必須です。社内で新しいだけでなく、業界内でも陳腐化していない革新的なものであることが求められます。

この点、過去のものづくり補助金から変更があったところなので、以前にも申請を検討したことがある方は注意してください。

グローバル枠

グローバル枠は、海外向け事業をこれから広げる段階にある事業者さんにぴったりの枠です。

グローバル枠では、「基本要件」に加え、申請する事業が以下の4つのいずれかである必要があります。

  1. 海外支店・海外子会社など、海外に直接投資する事業
  2. 輸出に関する事業
  3. インバウンド需要を獲得する事業
  4. 海外企業との共同研究開発等の事業

4つのそれぞれで、売上先の割合など、満たさなければいけない条件が異なります。グローバル枠の申請を検討する際は、公募要領や専門家の意見を参考に、要件を満たすかどうか、しっかりと確認してください。

補助対象の事業

ものづくり補助金に申請するには、規模や賃金引上げなどの事業者としての条件を含め、申請する内容が申請枠の要件を満たしていることが必要です。申請枠の説明で挙げた「新製品・サービスを開発すること」などもその1つです。

また、申請する事業を考える上では、対象となる経費をしっかりと把握し、上限の範囲内で補助金額を申請できるような事業にしなければなりません。

対象外の経費を自費で賄う分には問題ありませんが、対象となる経費がなかったり、上限・下限の条件を満たしていなかったりする場合は、入力フォームを完了させることができず、申請ができなくなります。

基本要件

枠にかかわらず必須となる「基本要件」には、次の4つがあります。

  1. 付加価値額を年平均3%以上増やせる計画
  2. 従業員と役員、それぞれの給与支給総額が年平均2%以上増やせる計画
  3. 補助事業を行う事業場内で、時給換算で最も低い給与(事業場内最低賃金)を、都道府県の最低賃金より30円以上高くする計画
  4. 従業員が21名以上の場合は、次世代育成対策推進法の一般行動計画を作成し、公表すること

これらのうち2と3は、達成できなかった場合、補助金を返還しなければなりません。

もちろん、申請に当たっては、決算書に準ずるような収支計画を入力するコーナーがあるので、そこにこの要件を満たす計画を入力すれば申請できます。

しかし、この要件の肝心なところは、事業を成長させ、利益を出して、その利益を人件費に回せるようになることにあります。人件費を増やす背景には、それを払えるお金ができることが大前提としてあるのです。

要件を守ろうとして人件費に圧迫され、経営が傾いては意味がありません。補助事業を計画する際は、「基本要件を満たす事業を考える」のではなく、「考えている事業で基本要件を満たせるだけの成功を得られるか」の視点が大切です。

対象となる経費

対象となる経費の費目は、機械・システムのほか、外注費、試作品の材料費、海外出張の旅費、知的財産の取得費用などです。

グローバル枠の中で輸出に関連する事業のみ、使える費用項目が多くなっています。

一部の費目には、補助金対象の費用の総額に対する上限割合が定められていることに注意が必要です。

共通の経費は下記のとおりです。

経費 経費の上限 注意点
機械装置・システム構築費 必ず機械装置・システム等を購入する必要があり、そのうち1つ以上は単価50万円(税抜)以上でなければならない。
運搬費 特になし。
技術導入費 補助対象経費総額の3分の1まで 特許などの知的財産を他社から購入するための費用。
知的財産等関連経費 補助対象経費総額の3分の1まで 特許取得のための弁理士費用や、外国特許出願のための翻訳費用。
外注費 補助対象経費総額の2分の1まで 新製品・新サービスの製造等の一部を外注する費用。グローバル枠では海外子会社への外注費が認められる場合がある。
専門家経費 補助対象経費総額の2分の1まで 技術上の専門家による指導や機械装置のレクチャー費用。相応の専門性が必要で、地位に応じた上限額がある。
クラウドサービス利用費 特になし。
試作品の原材料費 補助事業実施期間内に使い切ること、受払い簿を作成することなど詳細条件あり。

海外市場開拓(輸出)条件に該当する場合のみ適用となる条件もあります。

  • 海外旅費は上限5分の1まで
  • 通訳・翻訳費は上限5分の1まで
  • 広告宣伝・販売促進費は上限2分の1まで

事業再構築補助金など一部の補助金では、物件のリフォーム、工事などの費用を補助金申請に含めることができました。店舗改装や新規店舗の準備に活用した方も多いと思います。

しかし、ものづくり補助金では上記のとおり、物件に関する費用が含まれていません。

したがって、もし補助事業のために工事費等が発生する場合には、その費用は全額自費で賄わなければなりません。

補助金額・補助率と対象者の要件

ものづくり補助金を申請できるのは、「中小企業・小規模事業者」に該当する事業者です。

「ものづくり」の名前から「製造業のための補助金」と思っている方もいると思いますが、特に業種の制限はありません。サービス業や小売業なども含め、業態にかかわらず対象になり得る補助金です。

「中小企業・小規模事業者」の定義は業種ごとに、資本金額と雇用人数によって定められています。

補助金の上限額・補助率

ものづくり補助金の補助率は、一般の中小企業は2分の1、小規模企業・小規模事業者は3分の2となっています。また、再生事業者は製品・サービス高付加価値化枠で3分の2です。

ただし、「最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例」を活用すれば、小規模企業・小規模事業者に該当しない中小企業であっても3分の2とすることができます。

補助上限額は枠ごとに異なり、以下のとおりです。

製品・サービス高付加価値化枠

従業員数 補助上限額
5人以下 750万円
6~20人 1,000万円
21~50人 1,500万円
51人以上 2,500万円

グローバル枠は、規模にかかわらず3,000万円です。

さらに、「大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例」を利用すれば、従業員の人数ごとに、以下の額だけ補助上限額を上乗せすることが可能です。

従業員数 上乗せ金額
5人以下 最大+100万円
6~20人 最大+250万円
21人以上 最大+1,000万円

対象となる企業の規模・業種・法人形態

ものづくり補助金は、個人事業、会社のほかに、組合、連合会、NPO法人、社会福祉法人も、要件を満たせば申請することができます。

対象となる中小企業等の規模の定義は、公募要領に表の形式で示されています。業種ごとに掲げられている従業員数と資本金額の条件の、いずれかを満たせば申請可能です。業種に特別な縛りはなく、要件を満たせば、どの業種の事業者さんも申請できます。

なお、従業員数には、アルバイトは含まれ、役員は含まれません。日雇いの人や試用期間中の人は除いてください。また、派遣社員は派遣元の企業の人数に含まれます。

注意すべき「対象外要件」

以下の事業者さんは「対象外要件」に該当し、申請をすることができません。

補助金同士の重複関連

  • ものづくり補助金、事業再構築補助金、新事業進出促進補助金のいずれかに16か月以内に採択された事業者、または、これらの補助金の補助事業を実施中の事業者
    ※まだ採択されていない申請中のものと同時に申請することはできますが、両方が採択された場合、片方を選択しなければなりません。
  • 過去にものづくり補助金に採択されて事業を行ったものの、事業化状況報告等の報告を行っていない事業者
  • 過去3年間のうちにすでに2回ものづくり補助金を受けている事業者

実質的に中小企業でない

  • 大企業に実質的に保有されていると考えられる「みなし大企業」
  • 直近3期の平均課税所得額が15億円以上の事業者
  • 申請後に中小企業等の条件を満たさなくなった場合、対象外となる

その他

  • 親子会社は同一の法人とみなされ、いずれか一方しか申請できない
  • 暴力団関係者の申請は不可

2025年ものづくり補助金の公募内容とスケジュール

2025年度のものづくり補助金のうち、第19次公募は4月に、第20次公募は7月に締め切られました。

現在発表されている最新は第21次公募で、締切は2025年10月3日17時です。

例年どおりであればあと1回、年度末締切の公募がある可能性はありますが、確定ではありません。2024年度にはスケジュールに大幅なイレギュラーが発生したこともあります。

申請を考えている方は、第21次に応募しておいた方が良いでしょう。

申請の流れと必要書類

申請にはいくつかの事前準備が必要です。申請までの流れを押さえつつ、必要な書類等について説明します。

中には準備に時間がかかるものもありますので、先に一度目を通しておき、順序立てて取り組むようにしてください。

必要書類の事前準備

全事業者提出

  • 直近2期分の決算書/個人は確定申告書
  • 法人事業概況説明書/個人は収支内訳書又は青色申告決算書
  • 労働者名簿(労働基準法に則った内容のもの)

 

該当者のみ提出

  • 再生事業者に係る確認書:再生事業者の場合
  • 大幅な賃上げ特例に係る計画書:特例申請をする場合
  • 賃金台帳:最低賃金引上げ特例の申請をする場合
  • 金融機関が発行する確認書:金融機関から融資を受けて補助事業を実施する場合
  • 申請する事業の市場調査報告書等:グローバル枠の場合
  • 経営革新計画、事業継続力強化計画、特定適用事業所該当通知書、株式譲渡契約書など、加点に関する資料

フォームに入力するため、手元に用意する資料

  • 事業計画の内容が分かる資料
  • 過去に受けた補助金に関する資料
  • 次世代育成対策支援法に基づく一般行動計画の掲載URL

労働者名簿

ものづくり補助金では、全事業者が労働者名簿を提出します。

現在のものづくり補助金には、雇用している労働者が1人もいない事業者は申請できません。したがって、必ず1人以上の名簿を提出します。

気をつけなければならないのは、この労働者名簿が「労働基準法の内容を守ったものであること」とされている点です。

本来、言われなくても備えていなくてはいけない書類なのですが、中小企業ではきちんとした名簿が未整備であったり、整備されていると思っても内容が不足していたりすることがあります。

労働者名簿に記載すべき事項は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 履歴
  • 戸籍上で割り当てられている性別
  • 住所
  • 業務の種類
  • 雇用した年月日
  • 退職や死亡をした従業員について、年月日と理由

「履歴」の内容については、特に必須事項はありません。一般的には、異動歴や入社前の経歴を記載する例が多いようです。

提出する労働者名簿はこれらの項目が網羅されたものである必要があり、単に労働者を一覧に書いただけの「名簿」では認められません。この機会に、社内の整備状況も見直しておきましょう。

賃金台帳

賃金台帳も労働者名簿と同じく、本来であれば整備しているはずであるものの、中小企業では抜け漏れが多い書類です。

賃金台帳の記載事項は、下記のとおりです。

  • 氏名
  • 戸籍上で割り当てられている性別
  • 賃金の計算の期間(「〇月1日~〇月31日」など)
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働時間数(残業時間数)
  • 深夜労働時間数
  • 休日労働時間数
  • 基本給や手当の種類と額
  • 控除される項目と額

ものづくり補助金では、申請時に賃金台帳が必要になるのは特例申請の場合だけです。

しかし、そもそも賃上げ要件などがあることから、採択後に確認をされることになっても文句は言えません。実際に過去の公募分では、事業実施後の事業化報告の段階で賃金台帳が求められています。

補助金に申請するタイミングで、賃金台帳の整備も見直し、「今だけ」ではない体制づくりをすることをおすすめします。

GビスIDの取得

申請には「GビズID」が必要です。このIDは、国が実施する補助金の申請や雇用保険関係の申請など、複数の手続きで共通して使えます。

IDを取得するには、「GビズID」で検索し、公式サイトから「プライムアカウント」の申請書を作成します。その後、申請書を印刷し、印鑑(個人の場合は実印、法人の場合は法務局に登録されている法人印)を押し、印鑑証明書を添付して郵送します。

ものづくり補助金の申請をすると決めたら、できるだけ早くGビズIDの取得手続きをしましょう。申請書の作成から、郵送後にメールでログインの案内が届くまで、通常1週間程度、最大では2週間ほどもかかるからです。

事業計画書の作成

申請時に添付する事業計画書を作成します。この事業計画書の内容が、審査の上で最も大きな要素になります。

なお、以前は10ページ以内とされていましたが、現在は5ページ以内のPDFとされています。ページ数が少ないため、図や画像を駆使し、より無駄のない資料作成が必須です。

また、現在は社長や従業員の顔写真などを掲載することが「禁止」となりましたので、その点も注意してください。

必要事項を網羅する

事業計画書に必要な事項がすべて記載されていなければ、審査に影響が出るおそれがあります。

特に、以下の内容のうち、電子入力項目だけで伝わりにくい点があれば、間違いなく記載しましょう。

  • 申請の大前提となる「基本要件」を満たしていること
  • 申請枠ごとの要件を満たしていること
  • なぜその項目の製品・サービスが必要なのか
  • 購入する製品・サービスによってどのような効率化等の効果が得られるか
  • 投資が回収できる見込みの根拠
  • その他、公募要領の「事業計画書作成のポイント」に記載されている内容

技術的事項をしっかりと記載

ものづくり補助金では、他の補助金と違い、特に技術的な事項が重視されています。

すなわち、購入する機械等のどのような点が優れた性能であるのか、開発する新製品・新サービスがどんな点で素晴らしいのか、というようなことです。

これらを、顧客側のメリットだけではなく、設計図や性能についての記述を含めて説明します。

ものづくり補助金の申請で求められるのは、見た目の訴求力よりも、根拠が可能な限り数値的にしっかりしていることです。その点を意識してまとめていきましょう。
投資回収の視点を示す
ものづくり補助金では、高額の設備投資を補助するため、「投資した額を生産した商品・サービスで取り返せるのか、取り返すのにどのくらいの期間がかかるのか」を重視します。

したがって、購入する物品によってどれだけ売上が上がるかだけでは足りません。経費も含めた営業利益ベースで、計画する5年程度の間に補助事業の費用を回収し、プラスになる程度の計画が必要です。

申請枠の要件を意識する

それぞれの申請枠ごとの要件を満たしていることを示せなければ、内容がどんなに良くても、審査では落とされてしまいます。

電子申請の入力項目でもある程度は示せるはずですが、不足があると感じる部分はしっかりと計画書に落とし込みましょう。

費用は割引なしで見積もる

計画書の内容には、購入品の金額ももちろん関係してきます。それらの費用は補助金の申請額とも密接にかかわるでしょう。

計画書の作成を含めた事業計画の全体を通じて、費用は「割引を考慮しない」ように気をつけてください。

昨今は常に割引状態になっている通販サイトも多いですし、懇意の業者さんとの間での割引の約束ができている場合もあるでしょう。

しかし、実際の支払額が何らかの理由で申請した額を超えてしまった場合、その部分は自費となり、補助対象になりません。

物価高の折、購入時までに値上がりしてしまうことも考えられます。少なくとも割引はないものとして、少し高めの費用を見積もるくらいでちょうど良いと考えてください。

金額が大きいからこそ、実現可能な計画を

上記のような「コツ」を意識していると、つい売上や利益を「盛って」しまうような、半ば無意識的な過大評価が生じてしまうことがあります。

現実的な範囲で「良い予測」を記入するのは問題ありません。でも、本来は無理な計画なのに、補助金の審査に通るためだけに悪い可能性に目をつぶって書くことは、決しておすすめできません。

そのような計画書で審査を通過して、後で苦労をするのは事業者さん自身です。

補助金はいったん自ら負担した後でなければ支払われません。本当にその金額を負担できるのか、負担した後も事業を伸ばしていく事業体力があるのか、現実を見て計画を立てましょう。もし計画が通りそうもないのであれば、今はまだ、それほど大きな補助金を狙うべき時ではないのかもしれません。

電子申請

ものづくり補助金の申請は電子方式です。公式ホームページの「電子申請」のタブから指定のフォームを開き、入力・書類添付を行って申請します。

GビズIDの準備ができたら、本格的な申請の前に一度申請画面を開き、入力を開始してみると良いでしょう。フォームは途中保存が可能です。項目を事前に確認することで、実際の申請時に落ち着いて対応できます。

また、申請ボタンは早めに押すことをおすすめします。過去、申請締切日の当日に申請システムがサーバーダウンを起こしたことがあるためです。

サーバーダウンとまではいかなくても、急に画面が動きにくくなる、入力した内容がなぜか消えてしまうといったエラーも、申請当日には起こりがちです。締切日には申請者が集中し、システムの負荷が大きくなって、何が起こってもおかしくありません。できるだけ前日までに終わらせるようにしましょう。

ものづくり補助金に関するよくある質問

補助金の申請を考えている方がぶつかるのが、「自分でできるのだろうか」という点です。

ひょっとすると、周囲から「自分は1人でもできた」「専門家は報酬が高くてもったいない」などと言われたことがある方もいるかもしれません。

この記事の最後に、果たして自社での申請が可能なのか、また、専門家に相談することの意義についてもお伝えします。

補助金の申請は自社で行える?

ものづくり補助金の申請を自社で行うことは、不可能ではありません。

ただし、自社で申請するには、IDの取得や申請画面の操作方法とともに、申請を行う事業主自身が、自社の事業について、そして補助金のしくみや流れについても、深い理解を持っていなければいけません。

最悪なのは、自社でできると思って進めてきて、ギリギリになって「やっぱり無理だ」と判明するパターンです。期限直前に引き受けてくれる専門家は少なく、申請自体を断念せざるを得なくなることがあります。

ものづくり補助金は数か月に1回しか公募がないので、一度逃せば事業の実施も3か月遅れてしまいます。「革新的なサービス」や「グローバル展開」のような事業の遅れとして、3か月はかなり大きい時間です。

自分でできるかどうか、少しでも不安や迷いがあるならば、まずは相談だけでも専門家を探して連絡を取り、早い段階から関わりを持っておくほうが良いでしょう。

自社申請と専門家による申請サポートの違い

報酬を払っても専門家に依頼するメリットは、より良い計画を立て、実現することができる点と、面倒な手続きの大半を丸投げできる点にあります。

事業のビジョンや構想を口に出して話し、懸念点を相談すれば、それだけで頭も整理され、補助事業を具体的かつ現実的に進める力になります。専門家はアドバイスをしながら、事業主の頭の中の形のない構想を、補助金事務局が受け取りやすい形式に直してくれます。

そして補助金の手続きは、申請して終わりではありません。採択された後も、たくさんの書類を用意し、数字の整合性をとり、行政からの確認や修正の依頼に応えていかなければ、入金にたどり着けないのです。

とりわけ採択後においては、「設置前・納品時の写真」など、通常の物品購入では作成しない上、後になって作り直すのが難しいようなものもあります。専門家が事前に指示してくれれば、逃してしまって困ることもありません。

ただでさえ補助事業の実施で忙しいときに、書類仕事や行政とのやりとりまで漏れなくこなすのは大変です。専門家は間に入って行政の言葉を「通訳」したり、代わりに書類を作ってくれたりします。

自社で申請をすることはできるかもしれませんが、長期的に見れば、専門家がサポートに入っているほうが、補助事業全体が効率よく、成功路線で、ラクに進められると言えるでしょう。

ものづくり補助金はいつ入金される?

「補助金に採択されたから、すぐにでもお金が入るはずだ」。そんな風に勘違いする人が後を絶ちません。

補助金が入金されるのは、事業を実施し、その証拠を提出して、審査された後のことです。補助事業の実施期間は最大で採択発表日から12か月(グローバル枠は14か月)ですから、入金は申請時点から見て、最大で1年半ほども先になる可能性があります。

補助事業に必要な費用の全額を、いったんは自社で負担しなければならないこと。その上で、入金を待ちながらも事業を運営し、成長させて、人件費を増やさなければならないこと。この2つを忘れないでください。

専門家であれば、この間をつなぐための資金繰りについても相談できます。入金を待つ間に倒れてしまうことがないよう、早めの相談がおすすめです。