小学生が特許取得!空き缶分別箱を考えた小6少女の発明発想法(2)


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空き缶分別箱の仕組み

上の図は特許図面を加工したものです。一部の部品名もわかりやすい名前に書き換えてあります。<出展:特許5792881 図2から一部抜粋・一部改変>

スチール缶をスチール缶収容室に落とす仕組みは以下の通りです。シート片の右側には壁がないので、シート片はブラブラと自由に動きます。

  1. スチール缶は案内板の上を転がって壁にぶつかる。
  2. スチール缶は磁石に引きつけられた状態で、壁に沿って下に落ちる。
  3. スチール缶が壁の下端を過ぎると、磁石に引きつけられたスチール缶は壁の支えを失って、 壁の下側に回りこみ、シート片を右側に押し上げる。
  4. スチール缶はスチール缶収容室の上に入り込み、磁力が作用しなくなった時点でスチール缶収容室に落ちる。
  5. アルミ缶は磁石にくっつかない。このため、アルミ缶はシート片にブロックされてアルミ缶収容室に落ちる。

この空き缶分別箱の第1のポイントは壁の下側にシート片を付けたことです。シート片がないと、勢い余ったアルミ缶がスチール缶収容室に落ちることがあり、分別の成功率が下がってしまいます。

第2のポイントは磁石を設置した位置です。磁石を壁の上の方に設置してしまうと、磁石とシート片との距離が遠くなります。この場合、スチール缶が磁石にくっついた状態で止まってしまうか、スチール缶がシート片の位置まで落ちた時に十分な磁力が作用しなくなり、シート片をうまく押し上げられません。そうすると、スチール缶がアルミ缶収容室に落ちてしまいます。いずれにしても分別の成功率が下がるということです。シート片と磁石の絶妙なコンビネーション。これが正確な缶の分別の秘訣というわけです。すごくうまく考えられていますね。

小6少女の発明発想法

今回特許を取得した神谷さんの発明発想法は一言で言うと、「深掘り型」です。シート片の長さを変えながら何度も実験をして、74%程度だった分別成功率を96%まで引き上げています。試作と実験を地道に繰り返すことで、発明をブラッシュアップしているわけです。まだ小学生なのに、職人肌ですな(笑)テレビで空き缶分別箱の現物を見たことがあります。特許として権利請求されていない部分にも様々な工夫が施されていました。

・壁の表面に磁力を弱める樹脂シートを貼り付ける(スチール缶が磁石にくっついた状態で止まらないようにする)。

・案内板をバネ板状にし、案内板の先端と壁の間の距離を缶の直径より狭める(押し込まないと缶が入らないようにし、スチール缶に確実に磁力を作用させる)
・シート片の材質を変更する(シートの柔軟性によって、分別の特性を変える)などなど。本当に素晴らしいです。いやはや恐れ入りました!

まとめ

彼女から学ぶべきことをまとめてみます。

(1)アイデアを技術的効果を発生させる仕組みに昇華させる。
(2)試作と実験を繰り返す。
(3)アイデアを深掘りして、優れた効果が発生する条件を探す。

発明相談を受けていると、

・思いつきのアイデアに留まって、効果発生の仕組みを考えていない
・手を動かしていないために、実際の製品で起こるであろう問題点に気づいていない
・検討が不十分なために、ピンポイントで範囲が狭い発明に留まっている

というケースが多々見られます。発明は一日にしてならず。試作と実験を地道に繰り返すことが成功への道だと思いますよ。


山田先生、ありがとうございました!アイデアの深堀り、手を動かすことの重要性などヒントがたくさんあったと思います。大人から子供まで学ぶべき点が非常に多いと思います。ぜひご参考になさってください!(運営事務局・白石)

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