「オートファジー」でノーベル賞 大隅先生の苦言はモノづくりの世界にも通ずる(1)


東京工業大学の大隅良典先生が2016年度ノーベル医学生理学賞を受賞しました。細胞の「オートファジー(自食作用)」の仕組みを解明した業績を評価されての受賞です。おめでとうございます!

私は日大出身ですが、外部研究生として東工大で卒業研究をさせてもらいました。研究室にいたのはたった1年ですが、こうして東工大からノーベル賞受賞者が出たというのは嬉しいものですね。ただ、大隅先生の言葉を聞いていると、ご本人は意外に冷めた目で今の状況を見ているんではないかと…。

今日はモノづくりに関わる立場から大隅先生の言葉を掘り下げてみようと思います。

「『科学が役に立つ』というのが数年後に企業化できることと同義語になっている」

(引用)

ノーベル賞・大隅氏 「科学が役に立つのは100年後かも」(引用元:東京新聞 TOKYO Web 2016年10月4日 朝刊)

この記事によれば、大隅先生は受賞後の記者会見で「この上なく名誉なこと。数ある賞の中でノーベル賞には格別の重さを感じている」と素直に喜びを表す一方で、こんなコメントも残したとされています。

「今、科学が役に立つというのが数年後に企業化できることと同義語になっているのは問題。役に立つという言葉がとっても社会を駄目にしている。実際、役に立つのは十年後、百年後かもしれない」。

裏を返せば、「すぐに製品化することができるもの」、「数年後に企業に利益をもたらしてくれるもの」ばかりをもてはやし、そうでないものは「役に立たない」と切り捨ててしまう風潮に釘を刺しているのです。

「長期的な視野(基礎研究)を疎かにして、日銭を稼ぐこと(応用研究)ばかり考えていると、日本の未来はありませんよ」

そんな大隅先生の声が聞こえてくるようです。

大隅先生は地道に研究成果を積み重ね、今回のノーベル賞受賞で自然科学界の頂点に立ちました。しかし、それは過去の貯金によるもの。トップに立った時、将来に向けてどんな蓄えをしていくかで今後の10年、20年が決まっていきます。

たとえノーベル賞を受賞しても、そのことだけで日本の将来は保証されないのです。

(続く)

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