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補助金採択後の煩雑な報告事務を攻略するには

こんにちは。
行政書士の武田です。

先日、長期に渡って手続きをしてきたとある補助金の入金処理が無事完了しました。
補助金は原則後払いですので、補助対象事業を実施した後に報告事務を行って初めて補助金が入金されるのですが、
今回の補助金でかかった総手続期間、なんと7ヵ月!
それにしても長い手続きでした…。
この補助金はこの煩雑な手続き故に採択されても報告手続きが面倒になってしまい、
途中辞退をする方が後を絶たないそうです。
その数、2年間で1000件以上との報告がされています。

事業実施後のこの煩雑な報告手続きはなんとかならないものかと誰もが思うのですが、そこはやはりお役所仕事。
証憑などきっちり出すものは出さなければいけませんし、提出期限も守らなければいけません。
従って、こちらとしてはいかにスムーズに報告事務を行うかを心がける必要があります。

報告事務はどの補助金も、ある程度共通しているところがありますので、
事前に作業を予測しておくことで報告作業をスムーズに進めることができます。
(※補助金はそれぞれ独自のルールがありますのであくまでもご参考までに。)

①  即時の証憑保管
補助事業に必要な商品等の見積り・発注は採択後の日付でなければ原則として補助対象経費として認められません。つまり、採択後に発注したという証明のための証憑が必要になるのです。
見積書、発注書、請求書、領収書、これからは発生した時点で必ず保管しておきましょう。
数か月先の報告作業の時に、紛失したことに気付くという事態は絶対避けたいところです。

②  支払者をなるべく一本化する
補助事業によっては会社でなく個人が立て替える機会もあるかと思います。
会社名義で申請していた場合、会社から個人への精算が必要になることがあります。その際に立て替えした人が複数いると、その方のカード明細や精算書を作ったりと作業が何倍にもなる可能性がありますので、無理のない範囲でなるべく支払者を一本化したいところです。

③  補助対象経費の計上を単純化する(推奨)
「補助金が貰える費用は全て計上したい」と思うのは当然です。
しかし、細かい経費までを計上して項目だけが増えてしまうと、後々の報告作業が煩雑になることもあります。
これはあくまで私の個人的な推奨なのですが、経費計上をする際になるべく単純化するということも、一つの方法かと思います。
今年の創業補助金の申請をサポートさせて頂いた時には、ご依頼頂いたお客様から「人件費は計上しなくて良いです」というお話を頂いていました。
何故かと聞くと、昨年の同じ創業補助金の報告時、人件費の算出に大変苦労したからだそうです。

もちろん、全額の補助対象経費計上を否定するわけではありません。
貰えるものは全て貰った方が良いと思いますし、
それこそ補助金を受ける醍醐味でしょう。
しかし、補助金にせっかく採択されたのに途中であきらめてしまうのは本末転倒ですので、報告事務のボリュームを事前に検討した上での申請も、効率的に補助金を獲得する一つの方法なのではないでしょうか。

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くまモンに学ぶ知財戦略 ~オープン戦略~(2)

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!

クロスリンク特許事務所のヤマダです。

今回も前回に引き続き、くまモンに学ぶ知財戦略についてご紹介していきましょう。

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「利用料をタダにする理由(その2) ~利用目的を制限する~」

熊本県は、くまモンのキャラクター利用料を取っていませんが、その利用目的については厳正な審査をしています。

例えば、食品であれば熊本県産の原材料を使っているなど、熊本県のPRに直接関係するものだけに利用を認めているのです。熊本県とは何ら関係がなく、単に「くまモン人気」に便乗するような利用は認められないということですね。

厳正な審査を通過した企業だけに、くまモンの利用を認めることで、「くまモン=熊本県」の関係性を強烈に印象付け、熊本ブランドの構築に役立てているわけです。

「くまモンに学ぶべきこと ~オープン戦略の使い方~」

熊本県は企業などに、くまモンのキャラクター利用を認め、著作権や商標権などの知的財産権の一部を開放する戦略を採っています。このような戦略を「オープン戦略」といいます。くまモンの場合は著作権と商標権が対象ですが、特許権についてオープン戦略を採用することもあります。

例えば、トヨタが燃料電池車の利用を促進するために、燃料電池車に関する特許を開放した例があります。知的財産権は独占権なので、ともすると、自分の会社だけで独占的に使い、他社には使用させないという戦略(クローズ戦略)を採用しがちです。

仮に他社に使用させるとしても、使用料をもらいたいと考えてしまいます。ただ、その度が過ぎると将来的な市場を狭めてしまい、自分の首を締めることにもなりかねません。熊本県は目先の利益(利用料)に惑わされず、オープン戦略をうまく使って、キャラクターの利用を促進し、市場を拡大することに成功しています。

しかも、キャラクターの利用目的を熊本関連のものに限定することで、くまモン人気を単なるキャラクター人気に留まらせず、「熊本ブランドのPR」にきちんと結びつけたわけです。オープン戦略を使えるか否かはケースバイケースです。しかし、知的財産権がクローズ戦略だけではなく、オープン戦略のためのツールとしても使える、ということを頭の片隅にでも置いておいてください。

そうすれば、きっと知財戦略の幅が広がるはずです。

今回のポイント

1.知的財産権の一部を開放することで市場を拡大することができる。
2.知的財産権の開放に条件を付けることで、本来の目的を達成することができる。
3.クローズ戦略だけでなく、オープン戦略も頭の片隅に置いておくべし。

おまけ

くまモンに関しては、たくさんの記事がありますね。私は下の記事が一番参考になりました。
興味がある方は読んでみてください!

・日経ビジネスDIGITAL/「くまモン」は私たちが育てました
ゆるキャラを“売るキャラ”に変えた熊本県職員たち(山根 小雪)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/2012102…

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くまモンに学ぶ知財戦略 ~オープン戦略~(1)

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!

クロスリンク特許事務所のヤマダです。

このコラムでは助成金・補助金に拘らず、中小企業の経営にも役立つ知的財産に関する情報をお伝えしていきたいと思います。よろしくお願いします。


「くまモンのキャラクター利用料は、なんと無料!」

くまモンはあれだけの人気者なのに、キャラクター利用料は、なんと無料だそうです。くまモンは公募ではなく、プロのデザイナーに作らせたキャラクターです。熊本県はデザイナーから、くまモンの著作権を買い取り、商標登録もしています。それなりにお金がかかっているはずです。

普通なら、「キャラクター利用料を取ろう!そうすれば、今までかかった費用を回収できるし、うまくいけば利益も出ちゃうかも…(ムフフ)」と、考えてしまいそうです。

それにもかかわらず、熊本県はなぜ利用料を取らないのでしょうか?私が考えるところ、理由は以下の2つです。

「利用料をタダにする理由(その1) ~市場を拡大する~」

利用料を無料にして、くまモンのキャラクターをたくさん使ってもらい、くまモンの露出量を上げ、その広告宣伝効果によって市場を拡大する、という考え方なのだと思います。利用料が無料であれば、くまモンのキャラクターを利用したい企業がたくさん出てきます。

たくさんの企業がくまモンのキャラクターを利用する

⇒ くまモンが人目に触れる機会が増え、ネット上にも拡散される
⇒ くまモンの露出量が上がる
⇒ 熊本県のPRにつながる
⇒ 市場の拡大につながる

という図式です。くまモンは、熊本県のイメージアップ、産品販売や観光客誘致の面で、熊本県に莫大な利益をもたらしていると言えるでしょう。もし熊本県がくまモンのキャラクター利用料を取っていたら、これほどまでに、くまモンの露出量は増えなかったかもしれませんね 。

次回はもう1つの理由についてご紹介します。

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外国人起業家を強力支援!最大500万円の「アジアヘッドクォーター特区拠点設立補助金」とは(2)

行政書士の中楯です。


現在東京都ではさまざまな優遇措置を設け、外国人誘致に力を入れています。前回のコラムでは、アジアヘッドクォーター特区における企業の拠点設立のメリットをお伝えいたしました。

その中から、最大500万円もの支援が得られる「アジアヘッドクォーター特区拠点設立補助金」について詳しく説明していきます。

目的

本事業は、アジアヘッドクォーター特区内に新たに拠点設立等を行う外国資本法人に対し、拠点設立等に必要な経費に関する補助金を交付することで、外国企業の誘致を促進することを目的とします。

補助対象者
  1. 申請日の属する年度内に、アジアヘッドクォーター特区内に高付加価値拠点の設立等を行う外国資本法人(交付対象拠点において、3人以上の従業者が常時勤務することが必要です)
  2. 事前相談時において外国資本法人が設立されておらず、申請日の属する年度内に、アジアヘッドクォーター特区内に外国資本法人を設立し、当該外国資本法人の設立後、申請日の属する年度以降に、アジアヘッドクォーター特区内に高付加価値拠点の設立等を行う意思及び考え方が確認できる当該外国資本法人(交付対象拠点において、1人以上の従業者が常時勤務することが必要です
補助対象経費

拠点を設ける際に、行政書士等の専門家又は人材紹介会社に支払う経費が対象です。

例:在留資格取得経費、拠点設立及び各種届出経費、人材採用経費 等

助成率、補助上限

助成率:1/2

補助上限額:500万円(※)

※「在留資格取得経費」及び「拠点設立及び各種届出経費」については、次の金額を上限とします。なお、本補助金の交付は東京都の予算が無くなり次第終了します。

①在留資格取得経費:20万円
②拠点設立及び各種届出経費 :30万円

補助金交付までの流れ
■事前相談

・拠点設立の計画確定前に、東京都に相談してください。

■交付申請

・年度内に拠点設立を行い、東京都政策企画局調整部渉外化へ 申請をしてください。

■交付決定

・交付決定は、書面により通知いたします。

■補助金交付
受付期間

平成27年4月1日~平成28年3月31日

注意事項

・必ず東京都への事前相談が必要となります。
・2年以上事業を継続していただく必要があります。

外国人に対する補助金が少ない中、500万円もの補助金が出る大型補助金です。事前相談が必要ということですから、必然的に採択率も100%に近くなるでしょう。これから日本進出を考えている企業には、検討する価値が十分にあります。日本でのビジネス活性化に、アジアヘッドクォーター特区拠点設立補助金を是非ご活用ください。

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外国人起業家を強力支援!最大500万円の「アジアヘッドクォーター特区拠点設立補助金」とは(1)

行政書士の中楯です。

日本を訪れる外国人の数は年々増加傾向にあり、2014年度の新規入国者数は統計開始以降初めて1000万人を超えました。2020年東京オリンピックも決定し、政府は観光客とのみならず、海外企業の誘致を積極的に行っています。

その象徴が、「国家戦略特区」「アジアヘッドクォーター特区」です。「国家戦略特区」は東京都全域、神奈川県全域、千葉県成田市、福岡市、新潟市などのエリアです。

国家戦略特区の中でも、特にアジア圏の企業誘致を促進する、極めて重要なエリアを「アジアヘッドクォーター特区」としています。「アジアヘッドクォーター特区」は都内の一部に限られています(下図参照)。

特区エリアの紹介

このエリアにおいて拠点を設立した場合、税制の優遇や入国審査・特許審査の迅速化、補助金の交付など、非常に多くのメリットがあります。

以下の表にまとめましたのでご覧ください。

■アジアヘッドクォーター特区のメリット

1. 税制優遇・財務支援等
(1)税制優遇

アジアヘッドクォーター特区内に新たに進出する外国企業は(アジアの業務統括拠点・研究開発拠点)は、一定の要件を満たす場合、国税の優遇措置として、

①所得控除(20%)

②特別償却(機械:取得価額の50%、建物等:25%)

③投資税額控除(機械:取得価額の15%、建物等:8%)

のいずれか1つの適用を受けることができます。

(2)補助金

特区内の新たに拠点を設ける外国企業は、拠点設立に要した経費の1/2の補助を受けることができます。(上限500万円)

(3)無償経営コンサルティング支援

(4)低利融資制度

(5)賃料半額オフィスの紹介

2. 規制緩和
(1)入国審査の迅速化・提出書類の簡素化

東京都が認定する外国企業に就労予定の外国人に係る海外からの呼び寄せ手続きについて、通常の審査期間(1~3か月)が10日程度に短縮されます。

(2)特許審査の迅速化

研究開発拠点における特許出願の審査・審理について、通常の審査・審理期間(約22.2か月)から1.9か月に短塾します。また、中小企業に限り、特許料、審査請求料を半額にします。

(3)投資手続短縮等

アジアの業務統括拠点、研究開発拠点について、外国投資家が事前届出を行う場合には、外為法上3日間投資できないとされる期間を2週間に短縮します。

ビジネス・生活支援
(1)ビジネスコンシェルジュ東京

日本での拠点設立にあたり、諸手続きの支援や、外国企業の従業員やその家族に対し、日本で生活していく上での様々な情報をワンストップで提供します。

(2)充実したビジネス・生活環境

特区内には、耐震機能や自立型発電システムを備えた多機能オフィスビルを提供できる環境が整っています。

 

いかがでしたか?とても手厚い待遇となっていますね。実はこの制度はオリンピック開催決定前からあるものですが、開催決定によってますます活気づいてきています。

次回のコラムでは、「アジアヘッドクォーター特区」の補助金について詳しくご紹介します。

<参考URL>

・特区エリアの紹介

http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/invest_tokyo/japanese/invest-tokyo/merit.html#c_002

・特区のメリット

http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/invest_tokyo/japanese/invest-tokyo/merit.html#c_002