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​特許戦略の基本、特許調査の費用について最大100万円の助成を受けられる! ~特許調査費用助成事業(東京都知的財産総合センター)~

弁理士のヤマダです。

特許の取得を検討する上で、まず行わなければならないのが特許調査です。

他社の特許出願の状況、特許取得の状況を調査し、それらの技術との差別化を図らなければ特許の取得が難しくなるからです。

今日はその特許調査の費用の一部を助成してくれる、東京都知的財産総合センターの「特許調査費用助成事業」を紹介します。

● 特許調査費用助成事業とは

中小企業者が製品の開発戦略を策定したり、特許出願の戦略を策定したりする目的で、特許事務所や調査会社に他社の特許調査を依頼した場合に、その費用の一部について助成金を交付する事業です。

以下、この助成事業の概要を説明します。

特許調査費用助成事業の概要

● 対象者

東京都内の中小企業者(会社及び個人事業者)です。資本金額と従業員数の条件に加えて、大企業が実質的に経営に参画していない、という条件を満たす必要があります。

● 助成 内容

助成率は対象経費の1/2以内、助成金の限度額は100万円です。

● 助成対象経費

特許事務所や調査会社に他社の特許調査を委託した際に要する経費です。

調査の目的および内容は以下の4つに限られます。

  1. 開発戦略の策定(他社特許の調査、パテントマップ作成、特許出願動向の分析)
  2. 特許の出願戦略の策定(他社特許の調査、パテントマップ作成、特許出願動向の分析)
  3. 継続的なウォッチング(検索式の作成・改良、特許出願動向の調査)
  4. 侵害予防(他社特許調査、特許無効化のための調査)

助成対象は助成金申請日以降に契約し、支出した経費に限られます。既に開始している調査に要した費用は対象となりません。

● 助成対象期間

随時受け付けていますが、予算がなくなり次第、受け付けを終了します。

担当者に確認したところ、予算にはまだ余裕があるそうです(平成29年5月31日現在)。

● 助成を受けるための手続き

まず、東京都知的財産総合センターで申請内容について相談してください(事前予約要)。

その後、事前予約の上、申請書、その他の書類を東京都知的財産総合センターに直接提出してください(郵送では書類を受け付けてもらえません)。

担当者によると、相談の際に、①申請書のドラフト、②調査を依頼する予定の特許事務所や調査会社の見積書を持っていくと話がスムーズに進むそうです。

②の見積書に関しては、調査費用が助成対象(4つの目的と内容)に合致していることが分かるように記載されていることが望ましいということでした。

この助成金のユニークなところは、特許の出願費用ではなく、調査費用が助成対象となっている点です。

特許調査は特許戦略の基本中の基本ですので、これから特許戦略を立ててビジネスを展開していきたい企業様はぜひご検討ください!

東京都知的財産総合センター 特許調査費用助成事業(平成29年度)特許調査費用助成事業(平成29年度)

 

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「オートファジー」でノーベル賞 大隅先生の苦言はモノづくりの世界にも通ずる(2)

トップに立った時に策を打たなければ衰退する

(引用)

名誉市民を授与へ ノーベル賞大隅氏に 福岡市 [福岡県]

引用元:西日本新聞 WEBサイト
2016年10月04日11時24分 (更新 10月04日 17時01分)

 

今回の大隅先生の快挙に対し、出身地である福岡市と福岡県はそれぞれ「名誉市民」「県民栄誉賞」を授与することを検討しているようです。しかし、今回の受賞をそういう一過性のお祭りだけで終わらせるのは勿体ない。そう思います。

例えば、基礎研究に関する基金を作る、未来の研究者となる子どもたちを支援する…。そういった未来に向けて希望のある策を打つことが大事です。トップに立った時に将来に向けて効果的な策を打たなければ、そこから衰退が始まってしまうからです。

全く分野は違いますが、かつて女子サッカーW杯を制し、国民栄誉賞まで受賞した「なでしこジャパン」は今年のリオ五輪予選で敗退し、本大会に出場することができませんでした。

2011年ドイツW杯優勝、2012年ロンドン五輪銀メダル、2015年カナダW杯準優勝。

これらの輝かしい実績は、女子サッカーの競技人口を増やし、選手層の底上げを図る絶好のチャンスでした。でもその好機に効果的な策を打つことができなかった。このため新しい選手は育たず、旧態依然としたメンバーで予選に臨むことになり、いいところを見せることなく予選で敗退してしまったというわけです。

なでしこのキャプテン宮間選手は、カナダW杯の決勝前日に「(なでしこを)ブームではなく、文化に」と訴えていました。この宮間選手の切実な願いは、残念ながら強化セクションの関係者には伝わらなかったようです。やるべき時にやるべきことをやっていなければ、必ずそのつけが回ってくるということです。

モノづくりの世界も基礎が大事

モノづくりも、研究やサッカーと同じで、地道で継続的な取り組みが必要です。

キチンとした基礎を作らなければ未来はありません。また、特許や商標を出願することは先行投資であり、すぐに利益につながるものではありません。それでも継続してコツコツ積み上げていく。そうすることで初めて成果が出てくるのです。

それにも拘らず、特許を取った、商標登録を受けたというだけで何かを成し遂げたと勘違いしている企業も少なくありません。それどころか、出願が完了して、製品に「出願中」の表示をした途端に安心してしまい、その後の取り組みをやめてしまう企業すらあります。

出願や権利化はスタートにすぎません。

成果を出し続けていくにはどうしたらよいか、その成果をどうやってビジネスに活かしていくかを常に考える必要があります。出願や権利化をテコにして次への展開につなげなければいけないんです。

大事なのは「そこから何を始めるか」ですよ!

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「オートファジー」でノーベル賞 大隅先生の苦言はモノづくりの世界にも通ずる(1)

東京工業大学の大隅良典先生が2016年度ノーベル医学生理学賞を受賞しました。細胞の「オートファジー(自食作用)」の仕組みを解明した業績を評価されての受賞です。おめでとうございます!

私は日大出身ですが、外部研究生として東工大で卒業研究をさせてもらいました。研究室にいたのはたった1年ですが、こうして東工大からノーベル賞受賞者が出たというのは嬉しいものですね。ただ、大隅先生の言葉を聞いていると、ご本人は意外に冷めた目で今の状況を見ているんではないかと…。

今日はモノづくりに関わる立場から大隅先生の言葉を掘り下げてみようと思います。

「『科学が役に立つ』というのが数年後に企業化できることと同義語になっている」

(引用)

ノーベル賞・大隅氏 「科学が役に立つのは100年後かも」(引用元:東京新聞 TOKYO Web 2016年10月4日 朝刊)

この記事によれば、大隅先生は受賞後の記者会見で「この上なく名誉なこと。数ある賞の中でノーベル賞には格別の重さを感じている」と素直に喜びを表す一方で、こんなコメントも残したとされています。

「今、科学が役に立つというのが数年後に企業化できることと同義語になっているのは問題。役に立つという言葉がとっても社会を駄目にしている。実際、役に立つのは十年後、百年後かもしれない」。

裏を返せば、「すぐに製品化することができるもの」、「数年後に企業に利益をもたらしてくれるもの」ばかりをもてはやし、そうでないものは「役に立たない」と切り捨ててしまう風潮に釘を刺しているのです。

「長期的な視野(基礎研究)を疎かにして、日銭を稼ぐこと(応用研究)ばかり考えていると、日本の未来はありませんよ」

そんな大隅先生の声が聞こえてくるようです。

大隅先生は地道に研究成果を積み重ね、今回のノーベル賞受賞で自然科学界の頂点に立ちました。しかし、それは過去の貯金によるもの。トップに立った時、将来に向けてどんな蓄えをしていくかで今後の10年、20年が決まっていきます。

たとえノーベル賞を受賞しても、そのことだけで日本の将来は保証されないのです。

(続く)

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小学生が特許取得!空き缶分別箱を考えた小6少女の発明発想法(2)

前回の記事はこちら

空き缶分別箱の仕組み

上の図は特許図面を加工したものです。一部の部品名もわかりやすい名前に書き換えてあります。<出展:特許5792881 図2から一部抜粋・一部改変>

スチール缶をスチール缶収容室に落とす仕組みは以下の通りです。シート片の右側には壁がないので、シート片はブラブラと自由に動きます。

  1. スチール缶は案内板の上を転がって壁にぶつかる。
  2. スチール缶は磁石に引きつけられた状態で、壁に沿って下に落ちる。
  3. スチール缶が壁の下端を過ぎると、磁石に引きつけられたスチール缶は壁の支えを失って、 壁の下側に回りこみ、シート片を右側に押し上げる。
  4. スチール缶はスチール缶収容室の上に入り込み、磁力が作用しなくなった時点でスチール缶収容室に落ちる。
  5. アルミ缶は磁石にくっつかない。このため、アルミ缶はシート片にブロックされてアルミ缶収容室に落ちる。

この空き缶分別箱の第1のポイントは壁の下側にシート片を付けたことです。シート片がないと、勢い余ったアルミ缶がスチール缶収容室に落ちることがあり、分別の成功率が下がってしまいます。

第2のポイントは磁石を設置した位置です。磁石を壁の上の方に設置してしまうと、磁石とシート片との距離が遠くなります。この場合、スチール缶が磁石にくっついた状態で止まってしまうか、スチール缶がシート片の位置まで落ちた時に十分な磁力が作用しなくなり、シート片をうまく押し上げられません。そうすると、スチール缶がアルミ缶収容室に落ちてしまいます。いずれにしても分別の成功率が下がるということです。シート片と磁石の絶妙なコンビネーション。これが正確な缶の分別の秘訣というわけです。すごくうまく考えられていますね。

小6少女の発明発想法

今回特許を取得した神谷さんの発明発想法は一言で言うと、「深掘り型」です。シート片の長さを変えながら何度も実験をして、74%程度だった分別成功率を96%まで引き上げています。試作と実験を地道に繰り返すことで、発明をブラッシュアップしているわけです。まだ小学生なのに、職人肌ですな(笑)テレビで空き缶分別箱の現物を見たことがあります。特許として権利請求されていない部分にも様々な工夫が施されていました。

・壁の表面に磁力を弱める樹脂シートを貼り付ける(スチール缶が磁石にくっついた状態で止まらないようにする)。

・案内板をバネ板状にし、案内板の先端と壁の間の距離を缶の直径より狭める(押し込まないと缶が入らないようにし、スチール缶に確実に磁力を作用させる)
・シート片の材質を変更する(シートの柔軟性によって、分別の特性を変える)などなど。本当に素晴らしいです。いやはや恐れ入りました!

まとめ

彼女から学ぶべきことをまとめてみます。

(1)アイデアを技術的効果を発生させる仕組みに昇華させる。
(2)試作と実験を繰り返す。
(3)アイデアを深掘りして、優れた効果が発生する条件を探す。

発明相談を受けていると、

・思いつきのアイデアに留まって、効果発生の仕組みを考えていない
・手を動かしていないために、実際の製品で起こるであろう問題点に気づいていない
・検討が不十分なために、ピンポイントで範囲が狭い発明に留まっている

というケースが多々見られます。発明は一日にしてならず。試作と実験を地道に繰り返すことが成功への道だと思いますよ。


山田先生、ありがとうございました!アイデアの深堀り、手を動かすことの重要性などヒントがたくさんあったと思います。大人から子供まで学ぶべき点が非常に多いと思います。ぜひご参考になさってください!(運営事務局・白石)

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小学生が特許取得!空き缶分別箱を考えた小6少女の発明発想法(1)

小学生が特許取得!?

昨年、小学生の女の子が特許を取得したことが話題となりました。発明品は空き缶分別箱。箱の中に取り付けられた磁石によって、アルミ缶とスチール缶を自動的に分別するゴミ箱です。ただ、この発明のポイントは磁石ではありません。なかなかよく考えられていますよ。このゴミ箱の技術内容や彼女の発明発想法を分析してみました。

復習です。空き缶分別箱について

この発明に関してはかなり話題になったので、改めて説明する必要もないと思います。ご存知ない方のために。以下の過去記事が分かりやすいです。

小6少女が特許取得 缶を自動分別するごみ箱 夏休みの自由研究きっかけに
空き缶分別箱のイメージはこんな感じ(記事中のイラスト)

記事中のイラストは特許図面に描かれた構造とは若干違います。でも、大まかなイメージを掴むのであればあの図で十分です。アルミ缶は磁石にくっつかないので、そのまま下の部屋に落ちる。スチール缶は磁石に引き寄せられて、右側の部屋に落ちる。そういうことです。

スチール缶を磁石にくっつけることが発明になるんですか?

空き缶分別箱の話に入る前に「発明とは何か」について考えてみましょう。「発明」には色々な定義があるのですが、ざっくり言ってしまうならば、「技術的効果を発生させるための仕組みや条件」です(ヤマダ説)。「スチール缶を磁石にくっつけるなんて誰でも思いつくんじゃないの?」そう思う人もいるかもしれません。でも、スチール缶が磁石にくっついても、それだけではアルミ缶と分別できませんよね?彼女の発明は「スチール缶を磁石にくっつけること」ではなく、「スチール缶とアルミ缶を別々の部屋に正確に振り分ける(分別回収する)ための仕組み」なんです。

明日に続きます。


山田先生、ありがとうございました!お子さんの夏休みの自由研究、うちの子は何を作るんだろう・・なんてご心配の親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか!?こんな発明を宿題でこなるだけでも凄いのに特許まで取得するとは!次回は、弁理士の山田先生ならではの、なぜこの発明が特許取得に至ったのかについてご紹介いただきます。お楽しみに!(運営事務局・白石)

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ものづくり系中小企業はどこに向かっているのか ~B to BからB to Cへの転換~ (2)

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!クロスリンク特許事務所のヤマダです。
今回も前回に引き続き、ものづくり系中小企業のB to BからB to Cへの転換がテーマです。


「B to Bビジネスの問題を打破するには?」

展示会で色々な企業の方とお話をしてみると、B to Bビジネスの問題を打破する方向性として、以下の2つの方向性があるように見えました。

(1)B to Bビジネスを極める

徹底的な合理化を図ることによって、発注元からのコストダウン要請に応え、部品供給メーカーとして生き残っていく、という方向性です。今回の展示会では、加工製品を自動車バッテリー用のキャップに絞り込み、高度な加工を自動化・無人化して製造装置を24時間稼働させ、徹底的な合理化によってコストダウンを図っている企業がありました。

この企業は国内シェアの6割以上を獲得し、東南アジアにも製造拠点があるそうです。勢いを感じますね!

(2)B to BビジネスからB to Cビジネスに転換する

自分たちの高度な加工技術を活かして自社製品を開発し、企業ではなく一般の消費者に対して売り込んでいく、という方向性です。いわゆるB to C(個人相手)のビジネスですね。今回の展示会では、高度な金属加工の技術を活かしてキッチンツールを開発している企業がありました。B to Cのビジネスは、発注元の事情に左右されず、自分たちで仕掛けていくことができるのが魅力です。加工業者の新たなビジネススタイルとして要チェックですね!

「『すみだモダン』は、B to Cビジネスの好例」

最後に、加工業者のB to Cビジネスのモデルとなりそうな取り組み「すみだモダン」を紹介します。「すみだモダン」は、東京都墨田区が推進する地域ブランド戦略の一つです。

古き良き江戸の風情と、最先端の東京スカイツリーが混在するものづくりの町「すみだ」が、ちょっとなつかしく、そしてあたらしい製品を「すみだモダン」として認証し、ブランド化していく取り組みです。

下の写真をご覧ください。これは「kaico」というブランドのケトルです。金属のプレス加工会社である昌栄工業が製造し、すみだモダン2014に認証されました。

2014年「すみだモダン」商品部門認証商品一覧より

昌栄工業「kaico」

シンプルなデザインのケトルに見えますが、底に向かって広がる円錐台型のフォルムは製造が難しく、今まであまりなかったデザインとのこと。外部デザイナーが創り出したモダンなデザインを、昔かたぎの職人が高度な金属プレスの技術で実現する。

新しいデザインと、伝統的な技術がガッチリ手を組んだものづくりの新しい形態、ものづくりの未来を示した一品です。

このように、高度な加工技術を製品形態に落としこむができれば、意匠登録などの道も開けるはずです。

今日のポイント

1.B to Bを極めることで、部品供給メーカーとして生き残っていくことができる。
2.B to Cは、発注元の事情に左右されず、自分たちで仕掛けていくことができる。
3.高度な加工技術を製品形態に落としこむができれば、意匠登録などの道も開ける。

おまけ

「すみだモダン」には、他にもたくさんの商品が認証されています。ご興味がある方は、こちらをご覧ください。

「すみだモダン」 商品部門 認証商品一覧


山田先生、有難うございました!「すみだモダン」のロゴ、とってもおしゃれですし、ものづくりに強い墨田区の良いブランディングになっていますね。ものづくり補助金での、特定基盤技術に「ものづくり」が追加され、これからのビジネスモデルであると言えそうです。(白石/みんなの助成金 運営事務局)

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ものづくり系中小企業はどこに向かっているのか ~B to BからB to Cへの転換~(1)

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!クロスリンク特許事務所のヤマダです。
今日も中小企業の経営にも役立つ知的財産に関する情報をお伝えしていきたいと思います。
よろしくお願いします。


「加工業者のジレンマ」

「加工業者」とは、例えば、金属素材の切削、成形、表面処理などについて高度な加工技術を持った業者のことです。加工業者は発注元からの依頼に応じて、複雑な構造の部品や高い精度が要求される部品を製造しています。ただ、加工業者は、高度な加工技術を持っている割には、特許などの知的財産権を持っていないことが多いようです。それは、おそらく以下のような理由によるものと考えられます。

(1)加工の対象は、発注元の製品や部品であるため、その内容について勝手に特許を取ることはできない。(2)職人の加工技術は、職人の感覚に依存することも多く、技術としての客観性がないため、特許として認められにくい。
(3)特許を申請すると、技術ノウハウが公開されてしまうため、特許を申請しにくい。

このように、加工業者は高度な技術を持っているにも拘らず、技術の象徴とも言える特許を持つことは難しいというジレンマがあるのです。実際、幾つかの企業にインタビューしてみたところ、

「これからは特許を持っていないと、勝負にならない。」
「製品に付加価値を付け、利益を出すためには、特許が必要。」という頼もしい声もありましたが、このような声はかなり少数派。

特許などの知的財産権の取得については、消極的な姿勢の企業が大多数という印象でした。

「B to Bビジネスが抱える問題」

加工業者のビジネスは、発注元から注文を受け、製品の加工をし、納品する、いわゆるB to B(企業相手)のビジネスです。B to Bのビジネスにおいては、加工業者は下請け業者と見られがちで、発注元からの厳しい値下げ要求にさらされます。このため、たとえ他にはない高度な加工技術を持っていたとしても、それが企業の利益に結びつきにくいという問題があります。

次回はB to Bビジネスの問題の解決策と、その具体的な事例についてご紹介します。

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くまモンに学ぶ知財戦略 ~オープン戦略~(2)

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!

クロスリンク特許事務所のヤマダです。

今回も前回に引き続き、くまモンに学ぶ知財戦略についてご紹介していきましょう。

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「利用料をタダにする理由(その2) ~利用目的を制限する~」

熊本県は、くまモンのキャラクター利用料を取っていませんが、その利用目的については厳正な審査をしています。

例えば、食品であれば熊本県産の原材料を使っているなど、熊本県のPRに直接関係するものだけに利用を認めているのです。熊本県とは何ら関係がなく、単に「くまモン人気」に便乗するような利用は認められないということですね。

厳正な審査を通過した企業だけに、くまモンの利用を認めることで、「くまモン=熊本県」の関係性を強烈に印象付け、熊本ブランドの構築に役立てているわけです。

「くまモンに学ぶべきこと ~オープン戦略の使い方~」

熊本県は企業などに、くまモンのキャラクター利用を認め、著作権や商標権などの知的財産権の一部を開放する戦略を採っています。このような戦略を「オープン戦略」といいます。くまモンの場合は著作権と商標権が対象ですが、特許権についてオープン戦略を採用することもあります。

例えば、トヨタが燃料電池車の利用を促進するために、燃料電池車に関する特許を開放した例があります。知的財産権は独占権なので、ともすると、自分の会社だけで独占的に使い、他社には使用させないという戦略(クローズ戦略)を採用しがちです。

仮に他社に使用させるとしても、使用料をもらいたいと考えてしまいます。ただ、その度が過ぎると将来的な市場を狭めてしまい、自分の首を締めることにもなりかねません。熊本県は目先の利益(利用料)に惑わされず、オープン戦略をうまく使って、キャラクターの利用を促進し、市場を拡大することに成功しています。

しかも、キャラクターの利用目的を熊本関連のものに限定することで、くまモン人気を単なるキャラクター人気に留まらせず、「熊本ブランドのPR」にきちんと結びつけたわけです。オープン戦略を使えるか否かはケースバイケースです。しかし、知的財産権がクローズ戦略だけではなく、オープン戦略のためのツールとしても使える、ということを頭の片隅にでも置いておいてください。

そうすれば、きっと知財戦略の幅が広がるはずです。

今回のポイント

1.知的財産権の一部を開放することで市場を拡大することができる。
2.知的財産権の開放に条件を付けることで、本来の目的を達成することができる。
3.クローズ戦略だけでなく、オープン戦略も頭の片隅に置いておくべし。

おまけ

くまモンに関しては、たくさんの記事がありますね。私は下の記事が一番参考になりました。
興味がある方は読んでみてください!

・日経ビジネスDIGITAL/「くまモン」は私たちが育てました
ゆるキャラを“売るキャラ”に変えた熊本県職員たち(山根 小雪)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/2012102…

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くまモンに学ぶ知財戦略 ~オープン戦略~(1)

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!

クロスリンク特許事務所のヤマダです。

このコラムでは助成金・補助金に拘らず、中小企業の経営にも役立つ知的財産に関する情報をお伝えしていきたいと思います。よろしくお願いします。


「くまモンのキャラクター利用料は、なんと無料!」

くまモンはあれだけの人気者なのに、キャラクター利用料は、なんと無料だそうです。くまモンは公募ではなく、プロのデザイナーに作らせたキャラクターです。熊本県はデザイナーから、くまモンの著作権を買い取り、商標登録もしています。それなりにお金がかかっているはずです。

普通なら、「キャラクター利用料を取ろう!そうすれば、今までかかった費用を回収できるし、うまくいけば利益も出ちゃうかも…(ムフフ)」と、考えてしまいそうです。

それにもかかわらず、熊本県はなぜ利用料を取らないのでしょうか?私が考えるところ、理由は以下の2つです。

「利用料をタダにする理由(その1) ~市場を拡大する~」

利用料を無料にして、くまモンのキャラクターをたくさん使ってもらい、くまモンの露出量を上げ、その広告宣伝効果によって市場を拡大する、という考え方なのだと思います。利用料が無料であれば、くまモンのキャラクターを利用したい企業がたくさん出てきます。

たくさんの企業がくまモンのキャラクターを利用する

⇒ くまモンが人目に触れる機会が増え、ネット上にも拡散される
⇒ くまモンの露出量が上がる
⇒ 熊本県のPRにつながる
⇒ 市場の拡大につながる

という図式です。くまモンは、熊本県のイメージアップ、産品販売や観光客誘致の面で、熊本県に莫大な利益をもたらしていると言えるでしょう。もし熊本県がくまモンのキャラクター利用料を取っていたら、これほどまでに、くまモンの露出量は増えなかったかもしれませんね 。

次回はもう1つの理由についてご紹介します。

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特許出願の審査請求料・特許料を半額にする方法! ~特許料等の減免制度~

助成金コラムをご覧の皆さん、こんにちは!

クロスリンク特許事務所のヤマダです。

このコラムでは助成金・補助金に拘らず、知財コストの削減という観点からお話しをしていきたいと思います。よろしくお願いします。

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皆さんは、「特許料等の減免制度」をご存知でしょうか?

「特許料等の減免制度」は、特許出願の審査請求料(出願内容を審査してもらうための料金)や、
特許料(特許権を維持するために毎年支払う料金)を軽減または免除してくれる制度です。
特許は出願して終わりではありません。審査や権利維持のためのコストが継続的に掛かっていきます。

特許料等の減免制度は、これらのコストを圧縮することができるので、知財コストの削減策として非常に有効なのです。

実は、以前、このコラムでも特許料の減免制度について紹介しています。
「知らなきゃ絶対ソンをする!特許料の減免制度を活用しよう」
この記事で説明したのは、「H26年開始制度」という減免制度です。H26年開始制度は、特許料や審査請求料が1/3に減額されるので、かなりおススメな制度です。ただ、この制度は、従業員が20人以下の小規模企業が対象でした。

それでは、従業員が20人を超える中小企業は減免制度を使えないのでしょうか?そんなことはありません!H26年開始制度以外にも減免制度はあるんです。その1つが、「設立10年未満の法人等に対する減免制度」です。この制度を使うと、特許料や審査請求料が1/2に減額されます。

例えば、権利請求する発明の数が10個の出願の場合、審査請求料は約16万、10年分の特許料は約28万円掛かります。これらの費用が半分で済むということですね。

この減免制度を使うための条件は、以下の3つです。

  1. 資本金3億円以下であること
  2. 非課税法人であるか、設立後10年を経過していないこと
  3. 他の法人に支配されていないこと

これらの条件は、定款、登記事項証明書、納税証明書、株主名簿や出資者名簿などで証明することができます。事業計画書などの難しい書類を作成する必要はありません!

1件当たりの金額はさほど大きくないのですが、特許出願の数が増えてくると、コスト削減効果も大きくなります。これから知財にしっかり取り組んでいこうという中小企業さんにとっては嬉しい制度だと思いますよ。

以下のサイトも参考にしてみてくださいね!

・参考サイト

●「特許料・審査請求料等が安くなります!」(特許庁)

減免制度をわかりやすく解説したパンフレットです。このパンフレットの(1)が「H26年開始制度」、(3)が「設立10年未満の法人等に対する減免制度」です。

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山田先生、有難うございました!